弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
経済
2024年2月 8日
国債ビジネスと債務大国日本の危機
(霧山昴)
著者 山田 博文 、 出版 新日本出版社
現在、国債などの政府債務残高は1441兆円(2023年度末)で、GDPの2.6倍。これは主要国で最悪の水準。政府債務が対GDP比で2倍をこえる水準というのは、第二次世界大戦の敗戦時と同じ水準。
戦後の日本では軍事国債の増発はなかったのに、今や戦後70数年間に累積した国債などの政府債務残高は、第二次世界大戦に日本が参戦したときと同じ水準に達している。
国債発行によって実現したのが大型公共事業であり、これによって巨大企業は蓄財できた。そして、国債ビジネスで蓄財した民間金融機関は莫大な利益をあげている。国債は、潤沢な資金を運用し、利益を追求する大資本にとって、安心して投資できる第1級の金融商品である。
たとえば、みずほ銀行は、4451億円の業務純益を計上したとき、その内訳として際立つのは、5倍にもなった500億円という国債売却・償還益。
大手銀行は、中小企業に対する貸出を激減させる一方で、マナーゲームを展開して投機的な経営に精を出している。
国債を売ってひともうけするという「国債バブル」が生まれた。
大口取引に適合する国債市場は、株式市場の売買高を1桁ほど上回る1京円(1兆円ではありません)という巨大市場となっている。
国債は、政府が利子の支払いと元本の償還を保証しているので、投資家にとっては、株式などよりも安心して投資できる、信用力の高い投資物件だ。
3メガバンク(三菱・三井・みずほ)にとって、国債売買差益は数千億円にもなる。株高の恩恵を最大限に享受したのは海外の投資家と大企業。
その一方で、貯蓄ゼロ世帯の割合は3割を超えている。
日銀(日本銀行)の国債保有高は580兆円、日銀券発高121兆円の4.7倍になっている。日銀の総資産は733兆円にまでふくれあがった。
大手金融機関20社は、日銀を相手にした国債取引によって、今日までに10兆円前後に達する隠れた補助金を日銀から受け取っている。
日本には貯蓄ゼロ世帯が3割もいる一方で、5億円以上の純金資産をもつ超富裕層が9万世帯、1億円以上だと140万世帯もいる。タワーマンションが続々建って、すぐ売れるわけなんですよね...。
そして、大企業の内部留保は511兆円。投資家は、国内の株式配当金で毎年30兆円、海外投資から20兆円もの利子・配当金を受けとっている。
今や、日本の最大の貿易相手国はアメリカ(14%)ではなく中国(25%)である。
日本の国債ビジネスの実態と問題点などを分かりやすく解説している本です。一読して経済的認識を深めることができました。ご一読を強くおすすめします。
(2023年11月刊。2100円+税)