弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
イラク
2023年11月16日
イラク水滸伝
(霧山昴)
著者 高野 秀行 、 出版 文芸春秋
驚くばかりの現地踏査ルポルタージュです。イラクに広大な湿地帯があり、そこはアウトローたちの逃げ場でもあるというのです。なんで中国の「水滸伝」がイラクに出てくるのかという謎が本文を読むと、見事に解明されます。
この巨大な湿地帯、アフワールに入った日本人は少なく、その実情を紹介した本もほとんどありません。そんなところに、冒険家の著者は山田隊長と2人して出かけたのです。
この湿地帯は、イラクのペルシア湾に面した地方にあります。ここは、ティグリス川とユーフラテス川が合流する地点です。ハウィザ湖とハンマール湖という大きな湖があります。そして、ここに生える葦(アシ)は、なんと高さ8メートルもありますので、この茂みの中に逃げ込んでしまえば簡単には見つかりません。葦でつくった浮島があり、そこに住居もあります。
この湿地帯はユネスコの世界遺産に登録されたばかり。
この湿地帯での郷土料理は「鯉(コイ)の円盤焼き」。イラクでは5千年前から鯉が食されている。イラクでは法律によってアルコールは一切禁止されている。しかし、多くの人が日常的に密造酒や密輸酒を飲んでいる。
イラクの「軽いご飯」は、50代の日本人にとっては十分にヘビー級。
イラクの独裁者のフセインは干拓しようとして水路をつくりましたが、結局のところ失敗しました。この湿地帯にひっそりと生活してきたのがマンダ教徒です。
湿地帯の人々に多いマンダ教は、とても風変わりで特殊な宗教。マンダ教徒は洗礼者ヨハネを信仰している。マンダ教徒は、イラクでは「サービア教徒」と呼ばれている。マンダ教徒は伝統的に「舟大工」を生業にしている。マンダ教徒は古星術の使い手として知られ、サダム・フセインも頼っていた。マンダ教徒は全世界で10万人未満、イラクには3万人以下しかいない。マンダ教徒は絶対平和主義。
マンダの人々は2つの名前をもっている。一つはフツーの名前で、もう一つは星に由来する名前。こちらは他人には絶対に教えてはいけない。
湿地帯では水牛が飼われている。ゲーマルは、水牛の乳製品である。
この湿地帯では燃料に困ることはない。葺の再生力はものすごい。ただし、葺(カサブ)が密生した中へ入り込むのは困難。
湿地帯が放っておかれてきた理由は簡単。ここには何の利権もない。この一点に尽きる。石油などの天然資源は、ここにはないのです。20世紀のイラク水滸伝の主人公は意外にもコミュニスト(イラク共産党)だった。
この湿地帯には私有地はない。人々が所有するのは水牛だけで、あとはみな公共のもの。湿地帯には道がなく、集落もない。家にトイレはなく、敷地の端ですませるだけ。
マンダ教徒は、同じ信者内でしか結婚しないので、他の民族の血は混じらない。その目はきょとんとしたように丸く、顔立ちにちょっと愛嬌がある。
マンダ教徒が結婚するときの婚資(結納金)は高い。水牛10頭分にも相当する。これを潜脱する方法として、同じ家同士で娘を交換したら、婚資がいらなくなる。
浮島では女性は姿を隠さない。隠す場所もない。
本文474頁もある大作ですが、旅行記をのぞく気分で軽々と読みすすめることができました。それにしても著者は勇気があります。また、山田隊長の存在も大きいと思いました。
イラクの知られざる湿地帯の実情を知ることができる本です。一読をおすすめします。
(2023年9月刊。2200円+税)
日曜日に庭の畑からサツマイモを掘り上げました。昨年と同じ場所に畝(うね)を4列つくっていました。うち1列は先に掘り上げているのですが、小ぶりのイモばかりでした。それで残る3列に期待をかけていたのです。ところが、前より少しだけ大きいものがありましたが、ほとんど小ぶりばかりでした。どうして、なんでしょうか。
同じ場所にジャガイモを植えて6月に収穫したのですが、ジャガイモは店頭の商品と遜色ありません。
サツマイモって、意外に難しいのです。来年は、苗と植える時期を変えてみようかなと考えています。
庭にチューリップの球根を全部で300個ほど、あちこちに植え込みました。春が楽しみです。