弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2025年2月10日

ウマと科学と世界の歴史

生物


(霧山昴)
著者 リュドヴィク・オルランド 、 出版 河出書房新社

 家畜ウマのルーツは4200年前の北カフカスのステップにある。DNAによる探査で判明した。より正確には、ドン川とヴォルガ川の下流域。いやあ、なんでそんなことまで判明するのでしょうか...。不思議です。
 インド・ヨーロッパ語族の起源は、ステップの騎馬民族にある。
 ウマは、かつてもっとも狩られた動物種のひとつだった。
野生のウマは、きわめて社会的な動物であり、複数の雌(メス)ウマと、その子どもから成る群れで暮らし、総じて一頭の雄(オス)ウマに守られている。
若い雄ウマ、つまり独身雄は4歳か5歳になると群れを離れ、単独で生活する。それはしばしば数年におよび、年老いた「リーダー雄」を倒してトップの座につくまで続く。「リーダー雄」といっても、実は群れのウマに力を行使するのは雌ウマだというのは、珍しいことではない。
野生ウマは、どちらかというと移動を好まず、自然の原産地の周辺にとどまろうとする。
 ウマは1日に50グラムの塩を摂取する。いったい、どうやって、こんな量の塩を摂れるのでしょうか...、不思議です。
 ラバはウマより丈夫で、飢えや渇き、病気や害虫にも強い。ウマより足は遅いが、飼育にそれほど手間がかからない。ラバは辛抱強い。ラバはロバの性質を受け継いでいるが、ロバより体が大きく、ロバの悪い性質、強情さは持ち合わせていない。
 ラバはよく働き、自立心が強く、丈夫なので、運搬用の動物というだけでなく、貨幣の役割も果たした。ただし、ラバに繁殖力はない。
考古遺物がウマのものかロバのものか、それともラバのものか、決定するのは容易ではない。古代ローマ人にとって、ラバはきわめて重要な動物だった。オリエントでは、高位の者がラバに乗るのは珍しくなかった。
アラブウマが世界中で知られているのは、その特徴的なシルエットや自然な優美さとともに、並外れた持久力をもつから。もっともスタミナのあるウマは160キロメートルにもなる長距離耐久レースを競う。レースのあいだに4回の休憩をとりながら、騎手を乗せたまま平均時速20キロのペースで走り続ける。チベット王国では、現ナマではなく、ウマで茶の代金を支払っていた。四川省で生産された茶の半分が2万頭以上の馬と引き換えにチベットに送られた。
今日、アメリカにいるウマは、入植者たちが旧世界の出身地から連れてきたウマの子孫。かつてアメリカ大陸に生息していたウマは絶滅している。その子孫のウマは今のアメリカ大陸にはいない。
ウマの体は6歳にならないと完全に成熟しない。ところが、多くのウマが生後18ヶ月でトレーニングを始める。これは、人間ならわずか10歳の子どもがプロの競技会に出るようなもの。
競走馬にサイロキシンを過剰に投与すると心臓の不整脈を引き起こして死亡することがある。
 サラブレッドは競馬産業の中心にいて、アメリカ一国だけで毎年340億ドルの収入、そして50万人もの雇用を生み出している。
 ウマのことを初めて詳しく知ることができました。
(2024年9月刊。2970円)

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