弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2025年2月 3日
腸と脳の科学
人間
(霧山昴)
著者 坪井 貴司 、 出版 講談社ブルーバックス新書
現代日本人は、世界でも屈指の平均寿命の長さを誇っている。しかし、健康寿命(健康上の問題がなく日常生活を送れる期間)は、平均寿命よりも10年短い。その原因は、がん、糖尿病、肥満そしてアルツハイマー型認知症などにある。
怒りや不安、そして安心といった情動がかき立てられるような出来事が起こると、腸の活動が変化する。
脳にあるニューロンとグリア細胞と同じものが腸管神経系にも存在し、腸の蠕動(ぜんどう)運動などを自ら考えて調節するために機能している。腸の蠕動運動自体は、腸管神経系によって独立に調節されていて、ヒトの意思で自由に止めたり、あるいは動かしたりすることは出来ない。
脳は交感神経や迷走神経を介して腸管神経系に指令を与え、機能を調節することができる。
日本人の10~15%が過敏性腸症候群にかかっている。この過敏性腸症候群の患者では、副腎(ふくじん)は質刺激ホルモン放出ホルモンの影響で腸管の求心性迷走神経が過敏になっているため、ほんのわずかなストレスや情動によって便通異常が起こる。
腸は、腸内分泌細胞から分泌する消化管ホルモンや腸から脳へのつながっている求心性迷走神経を介して脳へ情報を伝えている。
脳腸相関とは腸と脳が相互に情報をやりとりしながら、お互いに影響を及ぼしあっているという概念。
腸内常在微生物叢(そう)を腸内フローラともいい、本書では腸内マイクロバイオ―タと呼ぶ。腸内マイクロバイオ―タは、ヒト自身が消化・吸収できない、さまざまな物質を分解している。腸内マイクロバイオ―タにはビタミンB類やビタミンKなどを産生するものがいる。腸内マイクロバイオ―タが産生した短鎖脂肪酸を体内のエネルギー源として利用し、ビタミンKには血液を凝問させるために利用している。
セロトニンやGABAといった神経伝達物質は、腸管神経系の活動を調節するために用いられている。住む国や地域、さらには人種によって腸内マイクロバイオ―タは大きく変化する。
腸内マイクロバイオ―タのうち、20%が善玉菌で、10%が悪玉菌、残りの70%が日和見菌。
腸は、体内で最大のホルモンを分泌する内分泌腺。
腸を整えるには、毎日、バランスの良い内容の食事をとり、ストレスと上手につきあい、運動をして、しっかり睡眠をとることが大事。安易に健康食品やサプリメントに頼らないこと。
腸って本当に大切なんですね、脳と直結してるっていうのは、私の実感にもあいます。
(2024年12月刊。1210円)