弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2025年1月19日
落語の地図帳
日本史(江戸)
(霧山昴)
著者 飯田 泰子 、 出版 芙蓉書房出版
江戸切絵図で旅する噺(はなし)の世界。江戸市中が舞台となっている古典落語を地域ごとに紹介している、実に楽しい本です。
切絵図とは、江戸時代後期大流行した住宅地図のようなもの、町々の様子を知るには格好の材料になっている。
切絵図は、頻繁に改訂し、絶えず最新情報を提供した。携帯に便利な切絵図は江戸に不案内な者にとっては江戸土産品(みやげ)だった。江戸切絵図は、尾張屋が32種、近江屋が43種を刊行している。
江戸の町割は平安京を手本とした。1区画は京間(きょうま)で、60間(けん)四方。
所払(ところばらい)は、居住する町から出て行けというもの。今の感覚では刑事罰とは思えない。
今の有楽町や新橋駅あたりは、江戸幕府の始まりのころは、まだ東京湾の中にある。
夏、両国橋で大花火が揚がった。橋の上流が玉屋、下流は鍵屋が陣どって技を競いあった。富裕層は涼み船、そうでない者は橋涼みをした。
馬喰町にある公事宿(くじやど)には、一般客は泊まれない「百姓宿」と、旅の客も利用できた「旅人宿」があった。
「本郷も兼康(かねやす)までは江戸の内」。「兼康」は、今の本郷3丁目にあったようです。
日本橋通1丁目には白木屋があった。越後屋、大丸屋と並ぶ、呉服の大店。
切絵図には桜並木もしっかり描かれている。花の時季には、よしず張りの茶店が出て見物客でにぎわった。庶民の人気の筆頭は隅田川堤。
絵がたくさん紹介されていますので、視覚的に楽しめる本になっています。
(2024年7月刊。2300円+税)