弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2025年1月10日

ブラジルが世界を動かす

アメリカ


(霧山昴)
著者 宮本 英威 、 出版 平凡社新書

 ブラジルというと、真っ先にアマゾンの密林を思い浮かべます。最近では金採集などによる乱開発が進んでいるようで、心配しています。
 ブラジルの人口は2億1600万人、世界で7番目。国土面積は日本の22倍もあり、世界で5番目。GDPは世界第9位と、かなり上位にあり、今後さらに発展しそう。
 270万人の日系人がブラジルに暮らしている。これは海外の日系人500万人の半分以上という割合を占めている。戦前戦後の日本から26万人がブラジルに移住した。
 そして今、日本には21万人超のブラジル人が暮らしている。愛知、静岡、三重、群馬などの工場で働いている。
 ブラジルは、人口の4割以上が混血。その結果、差別が比較的少ない社会となっている。奴隷解放は1888年と、遅れている。
 ブラジルはカトリック教徒の国で、65%、1億2千万人の信徒がいる。プロテスタントは22%。ブラジルは貧富の格差が大きい。相続税が極端に小さいので、富裕層の子弟は、優位な立場で人生を歩む。
 今のルラ大統領は3期目で、2期つとめたあと収賄罪で刑務所に入っていたけれど、カムバックした。ルラ大統領は幼いころから街頭でピーナツを売り、靴磨きをし、また、日系人の経営するクリーニング店でも働いた。旋盤工をしているとき、左手小指を切断するという労災事故にあった。汚職事件で有罪となり、580日間、獄中生活を送った。
2024年のG20の議長国として、ブラジルは存在感を発揮している。ブラジルで中国の影響力が低下した背景に、アメリカが中南米への関心の低下もあげられる。アマゾン川の全長は7千キロメートル。その流域は700万平方キロメートル。
 ブラジルは国内電力の85%を再生可能エネルギーにしている。水力が62%、風力12%、太陽光が4%となっている。
 ブラジルには中国製の品々がよく目立つ。
 農業大国ブラジルの弱点は、肥料の8割以上を輸入に依存していること。ブラジルでは、サトウキビを原料とするエタノール燃料がガソリン並みに扱われている。エタノールはガソリンよりも3割ほど燃費が劣るが、価格はガソリンの7割ほど安い。
 ブラジルは航空機メーカーがあり、米ボーイング、仏エアバスに次いで、ブラジルのエンブラエルは世界第3位。
 ブラジル人の7割がPIXを利用している。現金を持ち歩く必要がない。
 味の素の社長は、2代続けてブラジル経験者。
ブラジルは150年来、戦争をしていない。だから、世界に平和を訴えることができる。
 ブラジルと日本との関わりも少し知ることが出来ました。
(2024年10月刊。1100円+税)

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