弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2024年12月14日
きょう、ゴリラをうえたよ
人間
(霧山昴)
著者 水野 太貴(文) 、 吉本ユータヌキ(絵) 、 出版 KADOKAWA
いやあ面白い、子どもって、ホント、天才です。
私が一番気に入ったのは次のコトバ。お葬式で、お坊さんがお経をあげているのを見て...。
「あのおハゲ、なんでわけわからないことを言ってるの?」
「お坊さん」というコトバを知らない。でも、失礼のないように「お」をつけた。思わず笑ってしまいますよね、悪気のないことがアリアリですから...。
この質問に対して、「魂が天国に行けるようにしてるんだよ」と笑えると、「魂には足が何本ついてるの?」と子どもはさらに尋ねたとのこと。いやあ、鋭い質問ですよね。
さて、この本のタイトル。何を植えたかというと...。パンジーです。なんでパンジーがゴリラになったのか。パンジーがチンパンジーになり、それを思い出せなかったので、サルに近いゴリラになったというわけ。連想ゲームもここまで来ると、たいしたものです。
子どものころ、トウモロコシを「とうもころし」というのはよくある間違い。私の子どもは「ヘリコプター」を「へーくりっぱ」と言っていました。まあ、なんとか分かりますよね。
「ひいばあちゃん、しんぱくないー!」
寒いの否定は寒くない。眠いの否定は眠くない。だったら、心配の否定は「しんぱくない」。「心拍ない」ではありません。
「みず、いりたいです」
これは、水がほしいということ。「水がいる」と言ったので、ちゃんとお願いしなさいと言われて、「いる」に「~したい」がくっついて、「いりたい」になりました。なるほど、そうきたか...。
「セミが鳴いているね」「セミさん痛いの?」
鳴いているを泣いてると受けとめたのですね。
「パパ、いらなかったよ!」
これは家の中でかくれんぼをしていたとき、なかなかお父さんが見つからないので言ったコトバ。「いる」の否定なら、「いらない」。
「また、よごれたラーメン、食べにこようね」
このラーメンは、ドロドロしたこってり系のスープです。それを「汚れた」と表現しただけで、なんの悪気もありません。
子どもの言いまちがいには、コトバの本質が詰まっている。記憶のメカニズムのような認知能力も映し出している。
思わず吹き出しながら一気に読んでしまいました。おかげで、ほっこりした気分に浸ったひとときになりました。おすすめの本です。
(2024年10月刊。1650円)