弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2024年11月 7日
学校に行かない子どもが見ている世界
社会
(霧山昴)
著者 西野 博之 、 出版 KADOKAWA
マンガとともに不登校の子どもたちの声、そしてその対応策がとても分かりやすく紹介されています。改めて大変勉強になりました。私自身は弁護士として子どもたちの不登校問題に関わったことはありませんが、青年から中年までの引きこもりの人は今も関わっていますので、とても身近な問題です。
不登校の子どもが全国に30万人いるそうです。
文科省は、「不登校児童生徒が悪いという根強い偏見を払拭(ふっしょく)」すべきだという通知を全国の都道府県教育長あてに出している(2016年)。文科省は、不登校は「誰にでも起こりうる」もので、「不登校を問題行動と判断してはならない」としている。
不登校の子どもたちは、心の中ではとても苦しんでいて、みんなが当たり前にできる「ふつう」のことが出来ないと自分を追い詰めている。
日本では、15~39歳までの死因のトップは自死。これって、やはり異常ですよね。将来ある子どもたちを自死に追いやってはいけませんよね。日本の将来がなくなってしまいます。
義務教育の9年間でいじめが一番多い学年は小学2年生。その次に小学3年生、小学1年生と続く。小学校低学年にいじめが多いって、大変ですね...、知りませんでした。
学校に行けない子の多くは、自分でも理由が分かっていない。だから、原因探しはほどほどにして、まずは子どもをゆっくり休ませること。ふむふむ、そうなんですか...。
子どもが昼夜逆転の生活をしていても、過剰なまでに心配しないでいい。心を守るため、朝起きられない体を作っている。
子どもが一日中ゲームをしているからといって、唯一の楽しみを奪ったり、無用に制限すると、家庭内暴力に走ったり、親と一切会話をしなくなったというのは、よくあること。
鈍感な子どもは、「ふつうに」学校に行ける。なので、「ふつう」とか「あたりまえ」のほうを疑ってみたほうがいい。
親が唯一してあげられることは、居心地のいい家をつくること。家が子どもにとって安心、安全で、居心地のよい居場所になれば、子どもの回復は早まる。
子どもの動き出しの合図の一つは、「ひまだー」というコトバ。
世間体を気にしているうちは、子どもは動かない。関心を世間ではなく、子どもに向ける。
日常の、子どもとの意味もないような、どうということのない会話が実は大切。
「生きていれば十分」。心の底からそう思えたら、ゆっくりと何かが変わり始める。
親にストレスがたまれば、それだけで子どもに負荷がかかる。親がいきいき生きている姿を見ると、子どもは、自分は自分のままでいいんだと安心して、自己肯定感が養われる。
学校には無理して行く必要がない。それが常識になる社会にしたいものですね。そして、それは会社も同じこと。カローシ(過労死)するまで働く必要はまったくないのです。嫌なら、さっさと会社を辞めて、転身して生きのびましょう。
(2024年10月刊。1500円+税)