弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2024年9月26日

内閣官房長官の裏金

社会


(霧山昴)
著者 上脇 博之 、 出版 日本機関紙出版センター

 政権を握るということは、毎月1億円を好き勝手に使っていいということ。税務調査の心配もないし、領収書も不要。飲食代金に使おうが買収・供応資金に使おうが勝手次第。
 月1億円を自由に使える。これが官房長官の機密費です。
 ところが、実は、外務省にも同じような裏金があるのです。外交交渉で、外国の政府要人を買収・供応するための資金として「活用」されているようです。ときには、大使や外務省の担当官が、着服しているのが発覚して問題になったりもしますが、たいていは闇の中です。
この本で取り上げている裏金は、正式には「内閣官房報償費」と呼ばれます。月1億円、年12億円がきっちり支出され、使い残ったとしても国庫に返納するということはありません。
 会計検査院の実質的な審査はありませんし、領収書のチェックもありません。
 消費税を導入するとき、この官房機密費が十数億円も使われたことが明らかになっています。表向き反対していた公明・民社の議員を「買収」したのです。
 与野党対決の予想される重要法案を成立させるための国対費は1件あたり5千万円、ときに数億円になる。つまり、野党議員を裏金で「買収」していた(る)ということです。ひどいものですね...。
 沖縄県知事選挙にも、この官房機密費が使われました。1998年11月の知事選のときには1億7千万円が支出されたとのこと。
 国会議員が「海外視察」に行くときには餞別(軍資金)として、与党議員だと新人でも30万円、中堅以上なら100万円。いやあ、おいしいエサですね...、これって...。
 退任する日銀総裁、検事総長、会計検査院長にも百万円単位が渡される。最高裁長官には渡されないのでしょうかね...。
 著者は、この裏金の実態を明らかにしようと、裁判を起こしました。そして、ついに最高裁ですら、全面的ではないにしても、一部の開示を明示するよう判決したのです。
 著者の執念には、ほとほと頭が下がります。
(2018年7月刊。1200円+税)

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