弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2024年9月20日
政党助成金、まだ続けますか?
社会
(霧山昴)
著者 上脇 博之 、 出版 日本機関紙出版センター
2019年7月の参議院議員選挙で自民党の河井克行・案里夫婦の公選法違反(買収)事件のとき、自民党本部から1億5千万円もの大金が河井夫婦に渡されたが、そのうち1億2千万円は政党交付金だった。つまり、私たちの納めた税金が自民党議員の当選のための買収資金として使われたということです。とんでもない税金の使途です。
政党助成金の根拠となる政党助成法が制定されたのは1994年なので、もう30年にもなります。「政治改革」の名のもとに導入されたのですが、かえって政治が悪くなり、国民に無力感を植えつけてしまいました。
自民党本部のお金は幹事長マターだが、このときの1億5千万円は安倍首相の強い意向によるもの。河井克行は、安倍首相補佐官を長く勤めていて、対立候補は安倍にケチつけていた人物なので、その恨みを安倍は晴らしたかった。そして、1億5千万円のうちの1億円は自民党本部の使途不明金(つまりは裏金)だった。
政党交付金の原資は国民の支払った税金。なので、残金が生じたら、当然、国庫に返納すべき。しかし、自民党は返納していない。そして、政党基金とか支部基金として貯めこんでいる。その総額は、なんと277億5千万円をこえる。いやあ、とんでもない税金の使い方です。許せません。
「残金」を返納しないのは自民党だけではない。
政党交付金は税金を原資としているのに、政党交付金の使途は透明度が高くない。とくに、人件費は明細が不明。いつ、誰に、いくら支払ったという明細が記載されない。
自民党本部は、政策活動費に12億円ほど使ったことにしている。
そもそも、私的な存在である政党のために税金を投入してよいものなのか・・・。
政党交付金は317億円超。その半分以上の172億円が自民党本部に入っている。25年間でみると、政党交付金の72%、総額8221億円を自民党本部が吸い上げている。自民党本部の「人件費」の98%は政党交付金でまかなっている。自民党は大きな口を叩いていますが、政党交付金への依存度が高く、いわば国営政党というべき存在なのです。もっと謙虚に、大企業・金持ちのためではなく、庶民のための政治をしてほしいものです。
税金である政党交付金をもらっていると、国民から政治資金を集める努力をしなくなる。政治資金規正法を改正して、政党が公職の候補者に寄付することを禁止すべき。私も、この著者の提案にまったく賛成です。
自民・公明政権は領収書を10年後に公表するという、まことに奇妙奇天烈な法律を先日制定しました。信じられないほどの愚法そのものです。今いる国会議員のうち、10年後も国会議員だという人は、それだけいるでしょうか・・・。恐らく、ほとんどいないでしょう。
著者は、今のような小選挙区制ではなく、完全比例代表選挙にして、民意を正確に反映する国会の構成にすることを提唱しています。まったく異議なしです。
著者のweb講演を福岡の会場で視聴しました。その受付で販売されていた本を買って、読んでみたのです。大変勉強になりました。
(2021年2月刊。1200円+税)