弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2024年9月18日

検証  政治とカネ

社会


(霧山昴)
著者 上脇 博之 、 出版 岩波新書

 自民党とは、まさしく裏金まみれの違法行為を平然とし続ける政党だということがよくよく分かる本です。問題は、それを知ってもなお自民党に平然と投票する人にある。というより、そんなこと自分には何の関係もない、こううそぶいて投票所に足を運ばない人がなんと多いことか・・・、そこにあります。今や投票率の低さこそが裏金まみれの自民党を辛うじて支えていると言えると思います。
 裏金は簡単につくれる。企業が政治資金パーティー券を購入しても、誰が、いくら購入したのかは明らかにできない。自民党本部は、合法的に使途不明金(裏金)をつくることができる。
 政党に支払われる政党交付金は全額が税金。毎年300億円以上の税金が自民党などに支払われている(共産党は受け取り拒否)。自民党は250億円の収入のうち7割の170億円が政党交付金なので、国営政党のようなもの。
政治資金パーティーは政治家の資金集めを最大の目的としていて、その利益率は8~9割。参加者は寄付するつもりでパーティーに参加しているので、その実質は限りなく寄付に近い。1人20万円をこえたときのみ、収支報告書に明細を記載すればよいとされている。ホテルの会場の収容人員が最大1000人であっても、パーティー券はその何倍もの数千人分が売られていることは少なくない。
政党から政治家個人への寄付が許されていて、裏金となっている。
 自民党の政治家は複数の政治団体をもっているので、一人が年間150万円という制限を簡単に突破できる。
裏金は何に使われているのか・・・。一つには買収資金。自民党の総裁選挙は、もちろん公職選挙法の適用はありませんので、裏金が大活躍していることでしょうが、違法にはなりません。
私たちの税金を充てる政党助成金は、企業献金を廃止するので、その代わりのものとしてスタートした。しかし、企業献金は禁止されなかったので、政党助成金は、「泥棒に追い銭」となった。
著者は政党助成金は憲法違反だとしています。国会議員5人以上という要件は、少数者を不当に排除している。ドイツでは、政党助成制度は1960年代に憲法違反だとした判決が出ている。1月1日現在で交付対象とされているので、年末になると、5人以上の国会議員が新党をつくっている。
自民党の党員は547万人いた(1990年代初め)のが、今では109万人(2023年)しかいない。5分の1になっている。
小選挙区制は、与党の過剰代表を生み出すおかしな制度。大量の「死票」が出ている。自民党は4割しか得票していないのに議席は8割もとっている。そして、この「上げ底」に応じて政党交付金まで過剰にもらっている。小選挙区制になって、自民党の国会議員も「イエスマン」ばかり。内閣や党役員のポストを狙って、打算と利権だけの集団と化してしまった。
これだけ自民党の裏金づくりに対する国民の批判、いや怒りが湧き立っているのに、総裁選の9人の候補者は誰も裏金づくりを止めるとは言いません。そして、NHKなど、マスコミも、それを弾劾しないのです。摩訶不思議な日本そのものです。そんな世相に対する頂門の一針というべき新書です。ぜひ、お読みください。
(2024年7月刊。990円+税)

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