弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2024年9月15日

アリの巣をめぐる冒険

生物


(霧山昴)
著者 丸山 宗利 、 出版 幻冬舎新書

 アリの大群そしてアリの行列をよくよく観察すると、いろんなことが分かるという、面白い新書です。
生き物の発見は、視点がすべて。知識にもとづく独自の視点をもたなければ、新しい発見はできない。確固たる才がなければ、多くの生き物の存在を簡単に見落としてしまうのが野外調査の怖さ。
アリと多少とも共生あるいは依存することを好蟻(こうぎ)性という。
 アリの好む物質を出してアリから口移しに給餌を受けるもの、アリの巣にまぎれこんで餌の残りを食べるもの、アリの巣の周辺に住んで弱ったアリを食べるもの、アリの背中に乗って生活するもの、実にさまざまいる。
 分類学の研究では、写真技術の発達した今でも、絵描きのほうが有用な手段である。重要な部分だけを絵で示したり、強調できるから。
 アリの死骸がまとまって巣から出されるのは、年1回の早春に限られる。そこで、クサアリハネカクシは、この早春に産みつけられた卵は、わずか数日で孵化する。
アリはきわめて排他的で、他種に対しては強い敵対行動をとる。
 ヒメサスライアリは、アリを専門に食べるアリ。ほかのアリの巣を襲って、成虫や幼虫を狩って食べる。2~5ミリの小さなアリだけど、毒針を使って、自分よりはるかに大きなアリを仕留める。しかし、ヒメサスライアリは放浪性のアリなので、見つけるには偶然の出会いを求めるしかない。そして、基本的に毎晩、引っ越す。その引っ越しには、8時間も10時間もかかることがある。
ジャングルでは、ハチもヘビも怖いが、一番怖いのは蚊。マラリアにかかると大変。
 ヒメサスライアリの観察中、怒ったアリに刺されると、毒針なので強烈な痛さ。
 面白い、面白いと著者は書いていますが、なにしろジャングル(密林)の中なので、ともかく大変な現地探求の日々です。いやあ、学者って大変な苦労をするものですよね。とても真似できません。
(2024年4月刊。1040円+税)

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