弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2024年9月12日
なぜ「政治とカネ」を告発し続けるのか
社会
(霧山昴)
著者 上脇 博之 、 出版 日本機関紙出版センター
9月初め、福岡県弁護士会は著者による講演会を開催し、私も福岡の会場で視聴しました。著者はWeb出演です。詳細なレジュメと表にもとづいた、熱のこもった講演のあと、参加者との質疑応答も30分近くあり、著者のド迫力に改めて圧倒されました。
憲法学者である著者は、議会制民主主義の本質を踏まえて、現在の国会の議席構成には問題があると強調しています。
国民主権主義である以上、直接民主主義の採用も肯定し、かつ直接民主主義に限りなく近い議会制でなければ、議会制民主主義とは言えない。議院内閣制を採用している以上、国会の多数派である内閣の暴走に歯止めをかけるため、与党の過剰多数を許してはならない。そのためには投票価値の平等が必要だし、自由な選挙運動が保障されなければならない。
私は投票価値の平等を守るため、敬愛する伊藤真弁護士(憲法の伝導師と自称)の求めに応じて裁判の原告の一人になっています。
また、自由な選挙運動の実現のためには、著者は書いていませんが、戸別訪問解禁が絶対に欠かせません。日本がいつも真似するアメリカもイギリスも、戸別訪問こそ選挙運動の大きな柱です。選挙ポスター公営掲示板の制度も廃止して、もっと選挙運動は自由にして、みんなが楽しくやれるようにしたらいいのです。著者は小選挙区制をやめて、完全比例代表制を提案しています。大賛成です。そして、企業や労働組合の政治献金やパーティー券の購入は法律で全面禁止すべきだと提案します。これまた、まったくそのとおりです。
かの典型的な反共・労働貴族である芳野・連合会長は労組からの政治献金によっていくつかの政党の懐(ふところ)を握っている自信から、あのようなデタラメ放題を高言し続けています。労働者個人が政治献金できるのは当然ですが、労働組合が政治献金して政治を動かそうなんて、まったく間違っています。
内閣官房機密費は月に1億円、年12億円、まったく使い放題。会計検査院も手が出せない、「治外法権」のお金です。
このなかから首相には毎月1000万円、自民党の国対委員長には月500万円が現金で手渡され、領収書は不要というのです。裏金どころではありません。要するに、私たちの税金を政府の高官たち、自民党と公明党の幹部連中が飲み食いを含めて私たちの税金を好き勝手に、毎月1億円も使っているのです。許せません。
いやあ、それにしても、著者が地道な探究作業を長く続けておられることに、心より敬意を表します。
(2023年8月刊。1400円+税)