弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2024年8月25日

素粒子論はなぜわかりにくいのか

宇宙


(霧山昴)
著者 吉田 伸夫 、 出版 技術評論社

 素粒子を粒子とみなす原子論的な発想を捨て、場の考えを習得する必要がある。
 素粒子は粒子ではなく、量子論の性質によって、場が粒子のように振る舞っているだけ。移動するエネルギー量子が素粒子なのだ。素粒子は、場が励起した状態。場とは、至るところに存在し、あらゆる物理現象の担い手となるもの。空間と一体化し、空間に対して移動できないことが、場の特徴。
 素粒子は粒子ではなく、内部空間に形成された定在波によるエネルギー量子が、バネの連結を通じて外部空間を移動するもの。
光は粒子であると同時に波である。
ボーアは、実際には、粒子でも波動でもない、別の何かだとする。これに対して著者は、素粒子の実体は波であり、波が粒子のように振る舞っていると考えている。
質量とは、物質の量ではなく、質量エネルギーというエネルギーの一種なのである。
20世紀まで、質量がエネルギーの一種だという認識はなかった。
素粒子反応では、質量は一般に保存しない。素粒子の中には、生成・消滅するだけでなく、何かの拍子に別の素粒子に変わるものもある。
 素粒子が生々流転するのは、その正体が場の振動が伝わる波だからである。
ニュートリノは、スーパーカミオカンデなどで得られたデータから、現在では質量をもつことが現実視されている。
この本は数式を主体としていませんので、まったくの門外漢である私にも、分からないながらも、素粒子論について、おぼろげながら、なんとなくイメージをもつことができました。
 それにしても、ヒッグス粒子を見つけたCHCという施設を建設するのに5000億円もかかったというのです。まことに想像を絶してしまいます。
(2023年10月刊。1580円+税)

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