弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2024年8月20日

葬儀業

社会


(霧山昴)
著者 玉川 貴子 、 出版 平凡社新書

 後期高齢者(75歳以上)が800万人いるという日本です。これからますます葬儀業が栄える。そう思っていましたが、どうやら、この本によると、そうでもなさそうです。
これまで葬儀業の市場は2兆円から1兆6千億円という幅のある市場だと考えられてきました。ところが、葬儀一式費用が150万4000円から下がり続けているのです。今では112万円ほどになっています。人口の多い都市部では家族葬が定着しているので、これからも単価は上がらないとみられています。
 葬儀業の所管は厚労省かと思うと、そうではなく、サービス業として、経産省の管轄だというのにも驚きました。
コロナ禍で死亡した人は1万7千人弱。その全員が病院で亡くなっています。遺族は病院で最期を看取ることが許されませんでした。
そして、今や、家族葬が全国平均で65%(東京で52%)。一日葬(通夜なし)が10%、直葬(通夜も葬儀もなし、火葬のみ)が12%。これが最近の実情。
 葬儀の商品化は明治以降というのではなく、すでに江戸時代、関西に始まっている。いやあ、これは知りませんでした。
今ではネットで調べて葬儀社を依頼するというのが多くなりました。葬儀社は、許認可登録事業制ではない。
葬祭ディレクターという資格制度があるそうです。1級と2級があります。厚労省が認定します。
葬儀社の新規参入問題として、冠婚葬祭互助会と農業協同組合(JA)が取りあげられています。私も、少し前には冠婚葬祭互助会をめぐるトラブルにいくつも関わりました。毎月支払う会費では、とてもまかなえない高額の葬祭費を請求されたり、脱会したいのに出来ないと言われて高額の解約料の請求を受けている、そんな苦情(相談)でした。最近は、とんとありません。
私の住む団地では、昔は近所の人が亡くなると、隣組で受付・接待することになっていて、そのためのお茶碗なども隣組にありました。みんな高齢化してしまって、ずいぶん前から葬儀社に頼んでやってもらうようになりました。
日本社会が隅々まで変わりつつあることを実感させられる一つの現象を認識させられました。
(2024年5月刊。1100円+税)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー