弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2024年7月29日
バッタを倒すぜアフリカで
アフリカ
(霧山昴)
著者 前野ウルド浩太郎 、 出版 光文社新書
前の本(「バッタを倒しにアフリカへ」)は、なんと25万部も売れたそうです。モノカキ志向の私には、なんとも妬(ねた)ましい部数です。その印税で、助手の男性にプレゼントをする話も登場して、泣かせます。
この本は、前の本の続編ですが、新書版なのに、なんと600頁を超えていて、読みこなすのに一苦労しました。いえ、読みにくいというのではありません。著者の身近雑記が延々と語られていて、それはそれで面白いので、つい読みふけってしまうのです。
ともかく、バッタの婚活の研究をしている著者は、ネットその他を通じて本気で婚活しているのに、なぜかゴールインしないというのです。ええっ、いったいどういうことなんでしょうか...。ひょっとして選り好みが意外に激しかったりして...。
それにしても好きでバッタ博士になったはずの著者が、バッタアレルギーにかかっているとは、悲劇ですよね...。
著者がアフリカでバッタ研究を始めて、もう13年になるそうです。アフリカの西岸にあるモーリタニアの砂漠にすむ、サバクトビバッタの繁殖行動をずっと研究しています。
バッタは移動能力が高い。バッタは暑さに強い。
バッタは、フェロモンを利用した独特の交尾システムを有している。
バッタは多同交尾し、最後に交尾したオスの精子が受精に使われる。
バッタの産卵期間は脆弱(ぜいじゃく)である。
サバクトビバッタのメスは、オスと交尾しなくても単為生殖でも産卵し、子孫を残せる。ただし、うまれてくる幼虫はすべてメスであり、ふ化率は低い。
著者は、長く長く粘り続けたおかげで、その論文がなんとか、ようやく高級な雑誌に掲載され、ついに学者の仲間入りができたのでした。
それを著者は、がんばり、運が良ければ、どんな良いことが待ち受けているのか...と、表現しています。それまでの長く、苦しい研究がついに結実したのでした。2021年10月のことです。
著者は、今やFBに60万人ものフォロワーがいるとのこと。たいしたものです。「ありえないほどの超有名人」になったのです。
この本には、ロシアの女性(農民)が27回の出産で69人を出産したという、嘘のような本当の話が紹介されています。双子を16回も産み、また三つ子まで7回、さらに四つ子も4回産んだというのです。とても信じられない話です。
ちょっとボリュームがあり過ぎて、読みくたびれてしまいましたが、語り口の面白さにぐいぐいと最後まで読み通してしまいました。さすが、5万部も売れている新書です。
(2024年6月刊。1500円+税)