弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2024年7月16日
生き物の「居場所」はどう決まるか
生物
(霧山昴)
著者 大崎 直太 、 出版 中公新書
ニッチ(居場所)をめぐる新書です。ニッチとは、天敵からの被害を最小限に抑えることのできる「天敵不在空間」。
モンシロチョウ属の最大の天敵は、アオムシサムライコマユバチという寄生バチ。モンシロチョウ属の幼虫の体内に産卵し、孵化(ふか)したハチの幼虫はチョウの幼虫の体内で寄生生活を送る。ハチの幼虫が十分に育つと、チョウの幼虫の体内から脱出して蛹(さなぎ)になり、残されたチョウの幼虫は死んでしまう。
この天敵から逃れるため、3種のチョウは異なる天敵回避法を獲得している。モンシロチョウは新たに栽培されるキャベツを求めて移動し、コマユバチのいない世界に「逃げる」。ヤマトスジグロシロチョウは、ハタザオ属という他の植物の下草として覆われるように生える植物を利用してコマユバチから「隠れる」生活をしている。スジグロシロチョウは幼虫の体内でコマユバチの卵を殺してしまうという「攻める」生活をしている。
モンシロチョウ属のチョウは、カラシ油配糖体を含む、一度も経験したことのない新奇な植物に出会うと常に産卵する。そして、チョウは産卵できる植物の葉の形を学習して記憶し、離れた場所から視覚的に産卵植物を探し出す。
北海道の北半分にはエゾスジグロシロチョウ(エゾ)が棲んでいて、本州にはヤマト(ヤマト)スジグロシロチョウが棲んでいる。
学者ってすごいね、偉いなと思うのは、このエゾとヤマトのとてもよく似た卵と幼虫を見ただけで識別するのです。もちろん、それには年月がかかります。
ヤマトの幼虫の体色は緑色っぽくて、エゾの幼虫のそれは青っぽい。この体色の違いを識別できるようになるまで、2年間を要した。すごいことですよね、2年間もじっと見つめて観察していたのですから...。
さらに、蛹の重さはキレハ(黄色い花の帰化植物)で育てると平均184mg、コンロンで育てると132mgだった。つまり、キレハで育てたときのほうが重く大きな蛹になった。
すごいですね、体色で見分けるだけでなく、体重が184mgなのか、132mgなのか、計測までするということです。これって「ミリグラム」の世界ですからね、本当に根気のいる、大変な仕事だと思います。しかも、実験や観察で得られたデータを数式をつくって予測し、分析するのです。私のような凡人にはとてもまね出来ません。
前半は、私としては少し難しすぎでしたが、後半に具体的なチョウの知られざる生活のところは大変興味深く読み通しました。
私は、アサギマダラ(チョウ)が来てくれることを願って、フジバカマを大切に育てています。今では、フジバカマは20株ほど植えてアサギマダラを待ちかまえているのですが、まだまだ、やってきてくれません。それこそ、今年の秋には、ぜひ来てほしいと願っているのですが...。
(2024年1月刊。1050円+税)