弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2024年7月 4日
女性法律家
司法
(霧山昴)
著者 三淵 嘉子 、 出版 有斐閣
1983(昭和58)年5月に刊行された本の復刻版です。もちろん、「虎に翼」(NHK朝ドラ)が好評なので、復刊されたのです。主人公のモデルとなった嘉子さんは紹介を割愛します。
時代を感じさせたのは1965(昭和40)年12月に東京は神田に発足した「婦人総合法律事務所」です。もちろん、今でも「婦人」という言葉は生きていますが、今や男女共同参画の時代ですから、「婦人」というより「女性」のほうが親しみもあって、使われやすいと私は思います。現に、福岡には「女性協同」事務所があります。
「婦人総合」は、女性弁護士6人で結成されました。女性だけの共同法律事務所は全国で初めてだったので新聞、ラジオ、テレビで紹介され、開所初日には数十人の相談者が押しかけてきたそうです。以来、17年間、6人の女性弁護士から成る事務所は存続したそうですが、その後は、どうなったのでしょうか...。
ここの相談料は開所当初は1時間2000円で、17年たった時点では7000円。土曜・日曜は休みの完全週休2日制。私も弁護士生活50年のうち、少なくとも初めの20年間は、土曜日も平日と同じように相談を受けて働いていました。20年以上前から、土曜日は完全に休みで、朝からフランス語の会話練習にあてています。そして午後は、映画をみたり本を読んだりして自由気ままに過ごします。大切にしている私の自由時間です。
女性弁護士は、どうしても家事事件を多く受任し、担当することになります。そして、この家事事件の当事者にはなかなか厄介な人物が少なくないのです。弁護士の側によほどの覚悟とストレス解消の技(わざ)を身につけておく必要があります。
私はいわゆる企業法務を扱ったことはありません。大会社であっても社長や法務担当者に個性の強い人(いわゆるアクの強い人)が少なくないと思うのですが、そんな人たちと少し距離を置いてつきあわないと、こちら(弁護側)の心身がもたないことになってしまうと思います。なにはともあれ、女性法曹が増えたのはいいことです。
この4月から日弁連の会長は女性ですが、ついに検事総長も女性がなるというニュースを先ほど聞きました。いったい、最高裁長官に女性がなるのは、いつのことでしょうか...。
なんだか、当分、実現しそうもありませんよね、残念ながら...。
(2024年6月刊。2300円+税)