弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2024年7月 1日

森を失ったオランウータン

生物


(霧山昴)
著者 柏倉 陽介 、 出版 A&Fブックス

 ボルネオ島には、孤児となったオランウータンを保護し、育てあげて10年たったら森に戻すという施設があります。人間と同じ大型哺乳類なので、オランウータンを森の中の大自然に戻すには10年もかかるというのです。
 なんで、ボルネオから森がなくなったのか...。それは人間の都合。アフリカ原産のアブラヤシをボルネオで大々的に栽培するようになった。このアブラヤシからとれるパーム油はお金になるから。森は大々的に伐採され、なくなっていった。
 オランウータンは生まれつきの木登りの天才というのではなく、木登りをまず学ぶ必要がある。1~3歳は、木登り。そして、3~6歳は森林の中で生きていくことを学ぶ。
 ボルネオの熱帯林の焼失が急速に進んだため、野生のオランウータンは80%も減ってしまった。
 1964年に開設されたボルネオ島にあるリハビリセンターでは、これまで750頭以上のオランウータンが保護された。
リハビリセンターで、また森の中で遊んでいる自然な様子のオランウータンの顔を見ていると、オランウータンの保護というのは、それは人類の生存環境の保全にもつながっていると感じさせられます。アマゾンやボルネオの熱帯雨林を次に「開発」と称して消滅させていったら、次は人間の居住する環境も悪化していくことにきっとつながると思います。
 ところで、こんなに大々的に森林を植樹されてつくられるパーム油って、いったい何に使われているのでしょうか...。世界の生産量の85%を占めるのは、ボルネオ島を保有するマレーシアとインドネシア。
 ともかく、熱帯林をこれ以上減らすのは、ぜひ止めてほしいです。
(2024年3月刊。1980円)

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