弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2024年6月23日

湖池屋の流儀

社会


(霧山昴)
著者 佐藤 章 、 出版 中央公論新社

 イモカリントは良く食べますが、ポテトチップスを食べることはほとんどありません。なんとなく油がきついといいうイメージがあるからです。
 ポテトチップスは料理に近く、その延長のようなもの。湖池屋は、昔から、料理をつくるような感覚でポテトチップスをつくってきた。
 ははん、料理をつくる感覚のポテトチップスって、一体どんなものなんでしょうか・・・。
 日本中のじゃがいもを取り寄せて、何度も揚げて、ポテトチップスとして一番おいしいじゃがいもを探求した。
 ふむふむ、これはすごいことですね。わが家の庭でも6月にじゃがいもを収穫して、美味しくいただきました。
いま、「湖池屋プライドポテト」なるものがあるそうです。すごいらしいです。なにしろ、他社100円のところを、150円にして、競争に打ち勝ったというのです。質が良くなければ、ありえませんよね・・・。
 他社との安売り競争に巻き込まれたら、社員も会社も疲弊してしまって、泥沼にはまり込んでしまうだけ。
 そうなんです。弁護士だって同じです。低料金で何でもやりますなんていうのは、いくらでも手抜きしますよといっているようなものです。
 湖池屋は国産原料にこだわり、本物志向を創業以来貫いている。これは大いに評価できますよね。
日本人の味覚にあった、日本人が美味しいと感じるポテトチップスを目ざす。いやあ、いいですね、これって・・・。
 物量で押しきるようなパワーマーケティングではなく、付加価値を生み出す経営。価値あるものを生み出してきちっと光る存在になる。そのために明快な商品をつくり出す。安売り市場なんか一切見るな。ライバル社と対極的な企業ポジションをつくって打ち勝て。原料となるじゃがいもは100%国産を貫く。そのためには、北海道、東北、関東、九州など全国の農家と提携する。
 2017年2月に全国のコンビニで売り出した「プライドポテト」は、初年度だけで40億円もの売り上げを達成。いやはや、なんともすごい・・・。
 新規社員を採用するときは、会話がちゃんと壁打ちになって返ってくることが前提。一言いえば返ってきて、返ってきたことを受け返すと、またはね返ってくる。人の言葉を受けとめる力、聞く力は、いま改めて大切だ。
 モノづくりの最前線でがんばってきた人のコトバには、さすがに重みがあります。
(2023年12月刊。1600円+税)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー