弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2024年6月10日

カレー移民の謎

社会


(霧山昴)
著者 室橋 裕和 、 出版 集英社新書

 ネパール人が営むインド料理店が日本全国に5000軒ほどある。
ええっ、そ、そんなにあるの...。インド料理って、インド人がやってるんじゃないんですね...。
 ネパール人は日本のインド料理店で8年とか10年のあいだ働いて、それから独立する人が多い。
ネパール人の人口3000万人のうち40%は貧困層。1人あたりの年間所得は20万円ほど。家族・親戚のうち、誰かは必ず海外で働いている。
 海外からネパール本国への送金額は1兆1千億円に直し、GDPの3割を占めている。ネパールは世界屈指の「出稼ぎ国家」。
在日ネパール人は15万6千人(2023年)。10年前(2013年)は3万人だったので、10年間で5倍に増えた。
 日本に来たネパール人10人のうち成功するのは2人くらい。ネパール人の営むインド料理店は必ずしもうまく行っているとは限らない。うまくいっている店は、地域の日本人としっかりつながっているところが多い。
ネパール人は安全運転、まず失敗しないことを選ぶ。なので、初めに入って学んだ料理を独立してからも同じもの(味)をつくる。そして、自分のまかないは、ネパールの家庭料理で、店でつくっているものとは全然違う。
 インド人は男性が稼いで女性を養う。でも、ネパール人は妻も働く、家族で働く。いま日本にいるネパール人の3分の1が「家族滞在」。インド人は、カースト制度の意識が反映して、自分の仕事しかしない。ネパール人は、ひとりで何でもやる。
 ネパール人は、インド人と違って食材のタブーがない。イスラム教徒のインド人は豚肉を扱えない。
 カレー屋は、ネパールの貧困を固定化する装置にもなっている。
ネパール人が来日するとき、紹介料として100万円以上支払うことが多い。
 日本のカレーは、どろっとしたものが多いのに対して、インドやネパールのカレーは、もっとスープ状のもの。
 「インネパ」なるコトバを初めて聞き、その内実を知ることができました。
(2024年3月刊。1200円+税)

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