弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2024年6月 5日

デンマークにみる普段着のデモクラシー

ヨーロッパ


(霧山昴)
著者 小島文ゴート孝子 、 澤渡夏代ブラント 、 出版 かもがわ出版

 デンマークに長く住んでいる日本人女性2人が身近なデモクラシーを語っています。
 2人ともデンマーク人男性と結婚し、子どもたちはデンマーク国籍ですが、女性は日本国籍のままです。
 多数決でものごとを決めることをデモクラシーと考えている社会や人びとが多いが、それはあくまでもデモクラシーの一片に過ぎない。デンマークのデモクラシーは、ある意味、真逆で、いかに少数派の意見をよく聞き、汲み取り、反映できるかをとことん話し合い、考えてものごとを進めていくことだ。そのプロセスがデモクラシーであり、どうしても話し合いで解決策が見出せないときの最後の切札が、多数決だ。
いやあ、まことに正論です。今の日本の国会のように、まともな議論もせずに、ただひたすら多数決で押し切っていくというのは、デモクラシーでも何でもありません。今の自由民主党には、少なくとも「民主」、デモクラシーの名称を使う資格はまったくありません。
 2人の日本人女性がデンマークで長く暮らしていて常々思うことは、デンマークの女性が仕事面でもプライベート面でも、自立し、力強く、イキイキしていること。
どうでしょうか、日本の女性は...。もちろん、自立し、力強く、イキイキしている女性も決して少なくはありません。でも、まだまだ多くの女性が、自立しきれず、誰かに頼りがちで、その日暮らしをしているように思えてなりません。その一つの指標が投票率の低さです。
 デンマークでは、医療・福祉分野における女性の割合は85%、教育分野では60%を占めている。女性の就労率は76%(2019年)。たいしたものです。賃金の男女格差も小さいと思います。
 デンマークでは、学校運営にあたる理事会には、生徒代表も加わっている。
 デンマークには、学校選挙という14~17歳のための疑似選挙プログラムがある。2021年の学校選挙には全国750校の「中学生」8万人が参加した。そして、この投票の結果は、テレビで実況中継される。
 これは政治参加を体験できるものとして、日本でもぜひやってほしいです。
 デンマークでは、青少年国会が2年に1度開催される。そして、子ども市議会もあります。デンマークでは、中学生からアルバイトするのは普通のこと。性教育は高校でも実施されています。
 デンマークでは、教育は国の投資と考えられていて、大学をふくむすべての公立教育機関の学費に自己負担がない。留学するときも、国費留学のときには、大学相互で費用をカバーする。
 デンマークでは、政治は国民の生活に直結した、身近なものに感じられている。
 デンマークでは、教育も医療も無料で受けられるし、安心して暮らせるので、高い税金であっても払うのは当然と考えている。
 私の大学生のころは、学費は月に1000円、年に1万2千円でした。それが今では国公立大学でも50万円とか100万円です。信じられません。あの欠陥オスプレイやトマホークを買うお金を教育予算にまわしたら、日本でもすぐに実現できることなんです。つくづく日本には民主(デモクラシー)がないと、怒りすら覚えます。
(2023年6月刊。1700円+税)

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