弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2024年6月 4日

流出する日本人

社会


(霧山昴)
著者 大石 奈々 、 出版 中公新書

 海外移住の光と影というサブタイトルがついています。
 最近は聞きませんが、少し前までは退職して年金生活者になったら、物価の安い東南アジアの国に移り住んで優雅な生活を送っている日本人高齢者がいるというのがニュースになっていました。でも、コトバも生活習慣もまるで違い、何より身近な友だちもいないなかで、何を楽しみに生きていくことになるというのか、私にはまったく想像できない話でした。
 通産省は「シルバー・コロンビア計画」なるものをすすめていたのですね。オーストラリア、カナダ、スペインなどに、退職した日本人の移住者村を建設して、老後の海外生活を支援する計画でした。でも、「老人輸出」とか「棄民計画」と批判されて頓挫してしまいました。当然です。そんなものがうまくいくわけがありません。思いつきで良いことは何ひとつないのです。  
日本人の海外移住は52万人。アメリカに41万5千人、中国に10万人強、オーストラリア10万人、カナダ7万人、タイ7万人。そしてアメリカには20万人以上の日本の永住者がいる。
海外移住するのは、女性のほうが多い。カナダでは8割近いし、オーストラリアでも7割が女性。
日本人の帰化率は5割に達しない。中国は7割、インドは8割近いのと対照的。
日本人の大卒率で海外に永住するのを希望するのは25%。
この40年間に、ワーキングホリデー制度を利用した日本人は50万人以上。
この30年間に、20万人の日本人女性が国際結婚によって海外へ流出した。
離婚をきっかけに単身で海外に出る日本人女性もいる。ただ、海外に移住したあと、クレ被害者となった女性も少なくなく、帰国したくても帰国できないというケースもある。
海外で暮らすことのメリットとあわせてデメリットも考えておく必要があることがよく分かる新書でした。
(2024年3月刊。840円+税)

 久しぶりに筑後川でしかとれないエツのフルコースをいただきました。刺身は、叩きみたいにしてミソだれで食べます。塩焼き、煮つけ、天ぷら、つみれ(団子)、どれも美味しく、すっかり満腹となりました。
 目下、6月中旬のフランス語検定試験(1級)を目ざして猛勉強中です。過去問が1995年からありますので、30年も受験していることになります。残念ながら、成績は低下する一方で、最高で5割近くまでいった(6割で合格)のですが、今や4割もとれず、3割ほどでしかありません。ボケ防止のつもりで、がんばっています。

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