弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2024年5月20日
カーイ・フェチ(来て踊ろう)
アフリカ
(霧山昴)
著者 菅野 淑 、 出版 春風社
セネガルの路上やナイトクラブで開かれるパーティで踊られるダースである、サバールを徹底的に解き明かす本です。
サバールダンスはなかなか難しいようです。一見するとやさしく真似できそうなのですが、ドラマーと息を合わせるのは至難の技(わざ)なのです。
一度、ユーチューブで見てみたら、もう少し理解できるのかもしれません。文字だけでいうと、次のとおりです。軽い飛躍をともないながら、右足を高く振り上げ降ろす一つ目の動きに続き、左右交互に足を踏みつつ、大きく左右の腕を扇風機かのごとく振るステップ。踊り手の身体と、ドラマーとが「会話」する。この「会話」こそが、サバールダンスを踊る上で重要な要素である。ここまで書いたあと、ユーチューブで見てみました。たしかに日本にはない、激しく全身を動かします。
セネガルはアフリカ大陸の西にあり、その広さは日本の半分ほど。人口は1773万人。21の民族がいて、公用語はフランス語。イスラム教徒が95%で、キリスト教徒は5%。
首都ダカールの人口は340万人。かつてカースト制度があり、現在でも公式には廃止されていても、根強く残っている。踊るのは身分の低い人(ケヴェル)がするものという見方が厳然として存在している。サバールの太鼓を演奏するのは、男性のケヴェルだけ。
ダンサーの足はペンであり、ドラマーが演奏する音符を描く。良いドラマーは、音符の読み方を知る必要がある。こうして、即興的な「会話」が成立する。
サバールが踊られる場は、娯楽であり、人生儀礼を祝う場であり、若い女性の社交の場でもある。
日本人女性がセネガルに行って、このサバールダンスを身につけ、なかには一生の伴侶を得て、日本にカップルで戻ってくるケースも少なくないとのこと。そして、サバールダンスを日本で教えるのです。すごいですね。
日本に在住するセネガル人のダンサーやドラマーは全員が男性で、女性はいない。
日本人にとって、サバールダンスを学ぶ難しさは、手と足をバラバラに動かさなければならないうえ、跳躍をともない、かつ一定のテンポで踏むステップではないから。
しかし、このサバールステップを踏めずして、サバールダンスを体得したとは言い難い。
サバールダンスの魅力は、日本の踊りとの共通点がなく、独特で唯一無二のダンス、そして複雑なリズムにある。
いやあ、すごいですね。アフリカのセネガルに定住してまで、その独特のダンスを身につけようという日本人女性が少なからずいるというのに、驚きました。
(2024年2月刊。3500円+税)