弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2024年5月17日
シン・中国人
中国
(霧山昴)
著者 斎藤 淳子 、 出版 ちくま新書
今の日本では、「中国脅威論」なるものが大手を振るって通用し、自民・公明がすすめている途方もない大軍拡予算を支えています。
でも、それって思い込みでしょう。自民・公明そして維新などの政治家、さらには軍事産業でもうけようとしている人たちによる世論操作に乗せられているだけです。私はそう思います。戦争のないようにするのが政治家の役目なのに、今にも戦争が起こりそうだと危機をあおって、自分たちはひそかに金もうけにいそしむ。それが自民・公明の政治家たちの正体ではありませんか...。
この本は「脅威」の対象となっている中国の若者たちの実情の一端を伝えています。
まず私が驚いたのは、中国には離婚にあたってクーリングオフ(「冷静期」)があるというのです。離婚手続申請後の30日間は、手続きをいったん凍結するのです。日本でも、「共同親権」なんて実情にあわない馬鹿げた、しかも怖い手続を導入するより、よほどいいかもしれません。
さらに驚いたことは、恋愛中の(そして結婚している)男性は、女性にスマホのパスワードを開示する習慣があり、男性は断れないというのです。カップル間では一切の秘密があってはならないというわけですが、果たして現実的なのでしょうか...。
そして、結婚するとき、男性側は新婦側に結納金を贈る必要があり、今では、その相場が18万元(360万円)になっているというのです。この結納金を新郎側から新婦の家に贈る習慣は2千年以上の歴史があるそうですが、昔はこんなに高額ではなかったのです。
ところが、一人っ子政策、そして男性が女性より圧倒的に多くなってしまった結果、結婚したければ高額の結納金を支払えということで、年々、高額化していったのです。
さらに、今では、結婚したいなら、男はマンションを準備しなければいけないという「新しい常識」が定着しているというのです。しかもそのマンションたるや、1億円だったら安かったよね...というほど値上がりしています。マンション購入はカップルではなく、新郎側のファミリー全体のプロジェクト化しているのです。いやはや、お金がなかったら、結婚できないというわけなので、これも恐ろしい社会だというしかありません。
北京在住26年という日本人女性が、中国人の生活の変貌ぶりを生き生きと伝えていて、驚きながら一気に読み通しました。
(2023年2月刊。860円+税)