弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2024年5月 8日

コスタリカ

アメリカ


(霧山昴)
著者 伊藤 千尋 、 出版 高文研

 中米にある小さな国、コスタリカから日本は学ぶべきところが本当にたくさんあると実感させられる本です。著者は前は朝日新聞の記者で、今は国際ジャーナリストとして活躍しています。コスタリカ訪問ツアーのコンダクターとして、最近もコスタリカに行って帰ってきたばかりです(私はFB仲間なのです)。
 早朝というより夜中の3時に出発して、2時間かけて森の中のケツァールを見に行くというのです。極彩色の見事な小鳥なんですが、このスケジュールには私なんか恐れをなしてしまいます。
 コスタリカの人口520万人は、北海道の6割ほどの広さに住む。コーヒーやバナナを生産する農業国。
 コスタリカには軍隊がない。ええっ、それでどうやって国土を守っているのか。近くには、内戦が絶えなかったニカラグアやパナマそしてコロンビアなどがあるのに...。
国境警備隊と警察はある。しかし、両方あわせても1万人にみたない。戦車も軍艦も、戦闘機だって持っていない。自動小銃と迫撃砲しかない。
 でも、まず軍事予算の支出がないため、教育と福祉が充実している。教育費も医療費もタダ。
 こんな問いかけを受けたとき、あなたはどちらを選択しますか?
 兵士になりたいのか、いい教育を受けたいのか。兵隊になって上官から怒鳴られ人殺しをやらされるのを選ぶのか、人生で自分のモチベーション(動機)を見出すのか、どちらを選びますか...。
 いやあ、決まっていますよね。私は隣の韓国はすごいと日頃から思っていますが、一つだけ見習いたくないのは、韓国には徴兵制があるということです。有名な歌手の若者たちも、いろいろ騒がれながら、とうとう軍隊に入りましたよね。日本ではそれがないのを本当に私は良かった、すばらしいことだと確信しています。だって、人殺しの訓練なんか受けたくないし、朝から晩までしごかれるなんてまっぴらごめんですよ。
 病気になっても、コスタリカでは、薬も治療も、さらに手術代までも医療費は無料です。これだと安心して病院にかかれますよね。日本では、いくらか身体の具合が悪くても我慢している人が信じられないほど多い人です。医療費が高いからです。
 もっとも良い防衛手段は、何も防衛手段を持たないこと。本当にそのとおりです。
「抑止力」を持つといって、相手国が手を出したくないほどの軍備を持っていたら戦争が起きないっていう考えは明らかに間違いです。中国の軍事力を上回る軍事力を日本がもつなんて不可能ですし、もし本気で軍事力を増強したら国の経済は破綻し、国民生活は成り立たなくなってしまいます。
コスタリカの教科書には、政治家を信じるな、政府に批判的な目を持てと書かれている。
日本では、政府にモノ言わない、従順な生徒づくりがますます強まっていますよね。
自民党の政治家のあの無恥、厚顔ぶりを毎日のように見せつけられたら、政治家は信じられないと子どもたちは思うでしょう。でも、その次の行動が違います。
コスタリカでは子どもたちも選挙に積極的に関わります。選挙運動もするし、模擬投票もして、選挙はいつだって身近なものであり、大切なものだと実感しています。
ところが、日本では、「あなたまかせ」、投票所に足を運ぶことの大切さをまったく理解していません。残念です。
コスタリカでは国会議員は連続再選できない。選挙のたびに国会の構成が変わるのです。そして、完全比例代表制。いやあ、これはぜひ日本でも取り入れてほしいものです。日本では連続どころか、二世、三世の議員の議員だって珍しくないのです。おかしいと思います。政治家を職業とし、父子相伝にするなんて、私は間違っていると考えています。
そして、コスタリカの国会議員は男女ほぼ平等です。というのも、名簿の順番は男女を交互にするように定められているのです。うらやましい限りです。
コスタリカのツアーに参加した日本人が、現地に行って、道路はでこぼこ、学校の校舎はみすぼらしい、ホームレスが町にいる...といって、がっかりするそうです。そうなんです。コスタリカは天国ではないのです。それでも、人々は親切で、優しく、生きています。難民だって受け入れているのです。
どうでしょうか、こんな小さい国でやれることが日本で出来ないってことはないのではないでしょうか。読んで元気の出てくる本です。ぜひ、あなたもご一読ください。
(2024年3月刊。1800円+税)

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