弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2024年4月30日

カワセミ都市トーキョー

生物

(霧山昴)
著者 柳瀬 博一 、 出版 平凡社新書

 この本によると、目が慣れると、東京都内はカワセミだらけだったというのです。驚きました。
 なので、著者は都内6ヶ所でカワセミを定期的に観察しているそうです。
カワセミが活発に活動するのは2月から6月のこと。この期間は、観察するため6ヶ所をぐるぐる回るので、大忙しなのです。
 カワセミがいるのは、川のすぐ近く、湧水のつくった水辺のある森の近く。そして、著者の結論は、カワセミは東京の未来のまちづくりの先生だということ。
 カワセミは、川のつくった流域地形に生息する生き物の一種として、世界中に分布している。アジア・ヨーロッパ全域から北部アフリカまで、生息域は広い。
 ただし、住む地形を厳格に選ぶ。水中の生物のみを捉え、川が削った崖に巣穴をつくるカワセミは水辺から離れることはできない。
 カワセミは、英語でキングフィッシャーと呼ぶ。ブッポウソウ目カワセミ科の一種、スズメよりひとまわりほど大きい程度。日本では、『古事記』に既に登場している。
 カワセミの餌は、魚やエビ、カニ、オタマジャクシなどの水生昆虫、1羽1羽がなわばりを持ち、繁殖期でないときには、オスとメスとでも縄張り争いをする。
 カワセミは、年に1度から2度、繁殖活動をする。
 カワセミは1980年代に入って、東京都内に少しずつ戻ってきた。公害対策の成果だ。
 カワセミのメスは下唇が赤い。カワセミを見つけるには、その白いウンチ跡があるのを見るのが一番。白いペンキを細く飛ばしたようなしみが何本も残っていたら、それはカワセミのウンチの跡なので、近くにカワセミがいた証拠。
東京のカワセミは、人が声をあげても、体を動かしても驚かないというほど、都会生活に適応(順応)している。カワセミ夫婦は、抱卵も餌狩りも、餌運びも役割分担せずに一緒にやる。完全な共働き。
カワセミは狩りをして、獲物を食べて、お腹が一杯になったら、お風呂に入る。羽を清潔にしておかないと生命にかかわる。カワセミの生活は規則正しい。
東京でカワセミが繁殖するための3条件とは...。
① 餌(えさ)となる水生生物が豊富にいること。
② 巣穴をつくる穴があること。
③ 十分な縄張りの範囲が確保されていること。
巣穴については、コンクリート壁の水抜き穴で子育てをしてるのは間違いない。
構造色のライトブルーの可愛らしい小鳥がカワセミです。我が家の近くの小川でも先日、見かけました。 はっとする、美しい鳥です。そんな小鳥が東京にわんさかいるとは驚きです。

(2024年1月刊。1100円+税)

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