弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2024年4月27日

漫画家が見た百年前の西洋

フランス


(霧山昴)
著者 和田 博文 、 出版 筑摩書房

 東京美術学校で藤田嗣治や高村光太朗と同級だった近藤浩一路という画家であり漫画も描いた人の1920年代のフランス旅行記です。近藤は洋服を着たことがないし嫌い。フランス語も英語も話せず、始めての海外旅行ですから、失敗の連続。それを漫画タッチで絵にしているのです。
 フランスで、列車のなかで相席になったスペインの青年の似顔絵を描いてやったら、大喜びされたそうです。会話が出来なくても絵が描けたら、生きていけるのですよね。
 私は初めてのフランス家族旅行のとき、モンマルトルの丘で娘たちの似顔絵を描いてもらいました。もちろん値段が高いのは分かっていましたが、変な買物をするよりましだと思って頼んだのです。あまり娘と似ていませんでしたが、ともかく可愛い少女の顔にはなっていました。
 パリの朝食はバゲットです。パンテオン近くの小さいホテル(「サン・ジャック」)に泊まったときに出てきたバゲットの美味しさは、今でも忘れられません。それこそ「パンとコーヒー」のみです。「バゲットとカフェラテ」だけでしたが、十分にパリの朝食を堪能しました。
 フランスでは料理が十分に味わい楽しめます。シテ島ではみんなで定番のエスカルゴを食べましたし、カルチェラタンのレストランで生カキもいただきました。かっこいいギャルソン(今は使いません)の給仕で申し分ありませんでした。
 私は今も毎朝フランス語を聴いて書き取りしていますし、フランス語検定試験を年2回(1級と準1級)受けています。いったい何年間フランス語を勉強しているのかと訊かれると、恥ずかしくて答えたくありません。恥を忍んで白状しますと、なんと、18歳のときに大学の第2外国語としてフランス語を選択して以来です。そして、25歳で弁護士になってから、毎朝、NHKのラジオ講座を聴くようになりました。ですから、もう50年以上もやっているのです。それでも、話すのは初心者に毛の生えた程度という、お粗末さ。今はともかく能力の低下をどうやってくい止めるか、それで必死というのが実情です。もはや会話力が向上するなんていう高望みはしていません。
 フランスにまた行ってみたいとは思っているのですが...。その意味では百年前も今も同じだと思わせる本でした。
(2024年2月刊。1700円+税)

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