弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2024年4月25日
在日米軍基地
社会
(霧山昴)
著者 川名 晋史 、 出版 中公新書
在日米軍は、日本を直接的に防衛するための存在ではない。この点について、多くの日本人が誤解している。
日本にたくさんのアメリカ軍の基地があるおかげで日本の平和と安全が守られているというのはまったくの誤解であり、幻想にすぎません。
このことは、当のアメリカ政府の当局者が何度も明言しています。ニクソン大統領の下にいたジョンソン国務次官はアメリカの連邦議会で次のように証言した(1970年1月)。
「我々は、日本を直接に防衛するために日本にいるのではない。日本の周辺地域を防衛するために日本にいる」
アメリカ軍は、アメリカの財産である在日米軍基地とそこにいるアメリカ人(軍人、軍属そして家族)を保護する。
アメリカ軍は日本全土、とりわけ基地のない(日本の)地域を防衛する戦略は持っていない。アメリカ軍が責任を負う防衛範囲は、日本の重要な戦略地域、すなわち米軍基地その周辺である。
「日本防衛」の問題について、アメリカが検討したことは一度もないし、日本防衛を支援するための部隊も展開していない。
アメリカ軍基地などを身近にかかえている東京の現状は、まるでニューヨークに外国軍の空軍基地が3つ、海軍基地が1つ、ゴルフ場が4つあるようなものだ。
本当に情けない実情です。「誇り高き日本人」が、なぜこんな事態を黙って見過ごしているのか、不思議でならないとされています。まったく、そのとおりです。自民党の政治家(岸田首相がその筆頭)や外交官が「誇り高き日本人」の名に価しないことは明らかです。
普天間基地はアメリカ軍の基地とばかり思っていましたが、国連軍の基地でもあるのですね。
そして、沖縄の海兵隊は1968年12月にアメリカ国防総省によって「不要」とされたのでした。
辺野古につくろうとしている基地は海軍と海兵隊の複合基地であり、エンタープライズ級空母を収容できるもの。永久的なアメリカ軍の強大な基地がつくられようとしているのです。とんでもないことです。今の普天間飛行場にはない新たな機能が追加されるのです。つまり、普天間の「代替施設」ではなく、強大な「新基地」なのです。
辺野古基地建設を政府(自民・公明党)が強引にすすめているのは、一面では、リニア新幹線と同じく、ゼネコンのための工事という面もあると私は考えています。そこにあるのは、莫大な税金のムダづかい、そして利権に群がる与党(自民・公明)政治家の醜悪な姿が隠れているのです。そんな辺野古基地建設はすぐにやめさせたい、やめるべきです。
アメリカ軍と国連軍との関係も考察している本です。勉強になりました。
(2024年1月刊。1100円+税)