弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2024年4月22日
今日、誰のために生きる?
アフリカ
(霧山昴)
著者 ひすいこたろう、SHOGEN 、 出版 廣済堂出版
まずは衝撃的なコトバに出会いました。ハッとさせられます。
効率よく考えるのであれば、生まれてすぐ死ねばいい。
なーるほど、そうなんです。今の世の中、とくに自民党と公明党は効率一本槍で押し通しています。人間を育てるとき、効率優先でいいはずがありません。
人はいかに無駄な時間を楽しむのかっていうテーマで生きているんだよ。
きっと、そうなんですよね。「ムダ」なようで、実は決して「ムダ」ではない時間に私たちは生きているわけです。
アフリカのタンザニアにある「ブンジュ」と呼ばれる村民200人の村に日本人のショーゲン氏は生活し、そこでペンキアートを学ぶのです。
しかし、入村するには3つの条件をクリアーしなくてはいけません。その3つとは...。
その1、食事に感謝できるかどうか。感謝の心をもって丁寧に味わうこと。ちなみに、主食となる「ウガリ」というトウモロコシのパウダーをお湯で練って固い生地にしたものは、美味しくないそうです。
その2、「ただいま」と言ったら、「おかえり」と言ってくれる人がいるか。この村では、家族という血縁にこだわらず、常にいくつかの家族が助けあって生活している。
その3、抱きしめられたら、温かいと感じられる心があるか。これは、肌の触れあいの大切さ。人の温もりが分かる心があるかどうか。
ショーゲンは、「はい」と答えて、入村が認められました。
ケンカは、その日のうちに仲直りする。というのも、言い争いをしている大人を、子どもが見たくないから...。うひょう、その発想はすばらしいですね。
子どもと言えば、子どもの前で失敗を隠すのはやめてと頼まれます。なぜなら、大人が失敗するのを見せることで、子どもは出来ないことは恥ずかしいことではないと学び、失敗を恐れない子どもになると考えるからなのです。
なるほど、なるほど、これは大いに一理も二理もありますね。
この村では午後3時半になったら、みんな仕事をやめる。
ここは日が暮れるのが早いし、電気がないので、日の明るいうちしか家族の顔が見れない。なので、早く家に帰って、家族の顔を見るため、残業なんかせず、午後3時半になったら、みんな一斉に仕事をやめる。それが仕事の途中であっても、そんなの関係ない。
挑戦するということは、新しい自分に会えるという行為だ。
挑戦には失敗がつきものだけど、いつか失敗のネタが尽きるときが来る。失敗が満員御礼になるときが来る。そうしたら、成功するしかない。
ヤッホー、です。こんな考え方ができる人たちがいるんですね、世の中には。これまた、すごいことです。
この村はアフリカのタンザニアにあるそうです。そして、ショーゲンが学んだペンキ画は、下描きなしで6色のペンキで描くというもの。そのいくつかが紹介されていますが、独特の美しさをもっている画です。
いったい、本当にこの「ブンジュ村」というのは存在するのでしょうか...。それとも、夢にすぎない、おとぎ話なのでしょうか...。
(2024年3月刊。1760円)