弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2024年4月 9日

ガザとは何か

ヨーロッパ


(霧山昴)
著者 岡 真理 、 出版 大和書房

 イスラエルのガザ侵攻がいつまでたっても終わりません。本当に心配です。
 アメリカの国会議員(共和党)がガザに原爆を落としたらいいなんて、とんでもない発言まで飛び出しています。アメリカがイスラエルに停戦を要求しない(できない)ところに停戦が実現しない理由があるように思われます。
 すでに死者は3万人をこえ、その半数近くが子どもと言われていますし、人道支援も微々とるものにとどまっているため、餓死者が続出する心配が現実化しています。
 この本は昨年10月の2つの大学での講演録をまとめたものです。わずか40日という異例のスピードで緊急出版されました。
 今、イスラエルがガザ地区でやっていることは、ジェノサイド(大量殺戮(さつりく))にほかならない。
 ところが、今の日本のマスコミ報道の多くはハマスのテロ攻撃が原因だったとして、ジェノサイドに加担しているような状況にある。
 イスラエルはパレスチナ人に対してアパルトヘイトをしている。イスラエルという国は特定の人種の至上主義にもとづく、人種差別を基盤とする国家である。
ガザ地区は、西岸とともに1967年以降、50年以上にわたって、イスラエルの占領下にある。そして、2007年から、イスラエルによって完全に封鎖されている。物資も人間も、イスラエルの許可する物しか搬入・搬出、入域・出域はできない。袋のねずみ状態にされているガザ地区に対して、イスラエルは海から空から陸からの大規模な軍事攻撃をこの16年間に4回も繰り返している。つまり、ガザの人道危機は、今回の出来事で始まったことではない。
ガザの人口は230万人。その7割が難民。ガザの人々の4割は14歳以下の子ども。ガザの平均年齢は18歳。
 イスラエルはガザ攻撃で白リン弾を使っている。白リン弾は、空気に触れているかぎり鎮火しない。骨に達するまで肉を焼き尽くす。一度吸い込んだら、肺を内側から、体の中から焼き焦がしていく。
 シオニズムは、はじめユダヤ人のなかで人気がなかった。正統派ユダヤ教徒はシオニストはもはやユダヤ人ではないと考えた。
 シオニズムを推進した人々は、同化ユダヤ人で、非宗教的な人々だった。
 シオニズムのプロジェクトは、パレスチナの民族浄化を本質的かつ不可避に内包していた。ユダヤ国家イスラエルの建国は、レイシズムにもとづく植民地主義的な侵略である。ユダヤ人が祖国をもった結果、パレスチナ人は第二のユダヤ人、いわば現代のユダヤ人にされてしまった。
ガザ地区自体が一つの大きな難民キャンプみたいなもの。その面積は東京23区の総面積の6割ほどでしかない。ガザの失業率は46%で世界最高。著者は、ほぼ失業している。ガザの住民の6割は満足に食事がとれない。乳幼児の過半数が栄養失調。糖尿病がガザの風土病になっている。
 ハマースは、イスラーム主義を掲げる民族解放の運動組織。
 イスラエルは、主権をもったパレスチナの独立国家など、つくらせるつもりは初めからなかった。
 イスラエル軍は、パレスチナ人のデモ隊員を攻撃するとき、意識して若者の足を積極的に狙え...。
 イスラム教では、自殺を宗教的に最大のタブーとしている。それでも、自殺者が毎年2万人ほどもいて、とりわけ若い人に自殺が増えている。
 地獄とは、人々が苦しんでいるところのことではない。人が苦しんでいるのを誰も見ようとしないところのことだ。
ガザは、巨大な実験場。イスラエルの最新式兵器の性能を実践で実験するところ。
ガザについて、「天井のない世界最大の野外監獄」だとよく言われる。しかし、今の状況は監獄どころではない。囚人が無差別に殺される、なんて監獄があるはずもない。
私たちに出来ることはまず、正しく知ること。少しずつ学んでいく。これを継続する。
イスラエルに即時停戦、そして撤退を強く求めます。
(2024年3月刊。1400円+税)

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