弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2024年3月29日
「今どきの若者」のリアル
社会
(霧山昴)
著者 山田 昌弘 、 出版 PHP新書
「今どきの若者」をどうみたらいいのか、大変勉強になりました。
でも、この本を読んで腹が立ち、許せないと思ったのは、「世代間対立」をあおる論稿です。萱野稔人という人物は津田塾大学の教授だというのですが、この人は、本当に学者なのか、典型的な御用学者じゃないのか、私はその知性の低さに恐れおののきました。
年金制度について、著者は、若者が高齢者の年金を負担するという前提で議論を進めています。どうして、高齢者の年金を若者に負担させなければいけないというのか、著者はその点に疑問を持とうともしません。自公・政権とまったく同じ発想です。
そして、批判しようとすると、それは「きわめて独善的だ」と、スッパリ切って捨てる。そこには国の予算のなかで、防衛予算が突出して増えていて、そこでは収支バランスなど、なんにも考慮させられていないことをまったく無視しています。許せません。
この著者にかかれば、大学生の学費を無償にしろとか、小・中学校の統合をやめろという世論についても、とんでもない「独善的」だということになってしまうのでしょう。
人間を大事にせず、防衛産業だけを重視・育成しようとする政治には目をやらず、それを当然の前提・聖域としておいて、「世代間の対立」だけをあおり立てる言説をバラまくだけの人間が学者だなんて、やめてほしいです。そんな視野の狭い「教授」様に教わる学生は可哀想としか言いようがありません。
さて、ここからは本書を読んでの感想です。
今どきの著者の置かれている経済的基盤が激変していることを改めて認識させられました。私が大学生のころ(60年近くも前のことです)は、教授料は月1000円(年1万2000円)、寮費も月1000円でした。育成会の奨学金は貸与制が月3000円、家庭教師が週2回で月8000円前後でした。「貧乏」学生(あまり余裕がないというレベルです)でも、なんとかアルバイトしながらも授業には出れました。
今は、年間の学費が何十万円もするので、奨学金では追いつくはずがありません。大学に通うために、「風俗」とかソープランドで売春するという女子学生がいても不思議ではありません。本当にひどい世の中です。自民党政権が大学を金もうけ優先で運営していることの当然の帰結です。
今の若い人は、認められたいけれど、目立ちたくはない。人前でほめられるのを「圧」だと感じる。ゲームやケータイ、そしてスマホによって若者が本を読まなくなったという事実はないとのこと。昔から本を読まない人は多かった。恐らくそれはそうなんだろうと思います。
ただ、はっきりしているのは、「本離れ」ではなくて「雑誌離れ」は劇的に進行していること、そして、書店がどんどん減っていること、これはどちらも重大な現象です。
この本を読んで驚いたことのもう一つが、大学4年生の男子のホストが、好きでもない女性とのセックスが辛いという告白です。ええっ、本当かしらん、とやっかみ半分で思ってしまいました。女の子をたぶらかしてホストクラブで大散財させて、売春させるホストクラブの摘発が相次いでいるというニュースが先ごろ流れていましたが、ホスト後の男の子のほうも辛いというんです。そうなんですか...。知らない世界がたくさんありました。
(2023年11月刊。980円+税)