弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2024年2月16日

安倍晋三VS日刊ゲンダイ

社会


(霧山昴)
著者 小塚 かおる 、 出版 朝日新書

 国会答弁のなかで安倍晋三首相(当時)は次のように言った。
 「きょう夕方、帰りに日刊ゲンダイでも読んでみてくださいよ。これ(言論機関)が委縮している姿ですか、委縮はしないんですよ」
 安倍晋三がこうやって国会で持ち上げた「日刊ゲンダイ」は、たしかに鋭い安倍批判を展開していました。でも、記者会見のときには「日刊ゲンダイ」の記者はいくら手を挙げても指名されないので、質問ができなかった。
 大手新聞は、ヨミウリ・サンケイだけでなく、NHKをふくめて明らかに「萎縮」しているのが現実です。
 「新聞とテレビは制圧した。あとは『文春』のような週刊誌と日刊ゲンダイ」
 これが自民筋の最奥部から洩れてくるホンネです。最近では、これに加えて「しんぶん赤旗」が入るのかもしれませんね(自民党の裏金スクープなど)。
 自民党の国会議員の世襲比率は3~4割。そして、世襲候補の勝率は8割。圧倒的に高い。世襲候補の7割は自民党。
安倍首相は、大手メディア幹部と月2回、「夜の会食」に励んでいた。1人予算は1万円以上。その源資は月1億円が使い放題という例の内閣官房機密費でしょう。何しろ領収書不要の「ヤミのお金」ですから(もちろん、すべて私たちが税金として負担させられているものです)。
 岸田首相は、「総理になったら一番やりたいこと」を問われて、「人事」と答えた。そして、子ども記者から「どうして総理になろうと思ったのか」と質問されたとき、「日本の社会の中で一番権限が大きい人だから...」と答えた。
 いやはや、正直にホンネを吐露したのでしょうが、これって日本の首相が子ども記者に言うべきコトバでしょうか。こんな人をトップにいただいていて、まともな「道徳教育」が出来るとは、とても思えません。せめて、「弱者救済」とか「社会正義を実現したい」と、建て前を言ってほしかったです。すると、子ども記者は次の質問が繰り出せますよね。
 「現実はそうなっていないようですが、それはなぜですか」と...。
 安倍元首相はひどかったが、岸田首相はもっとひどい。まったくそのとおりです。支持率が2割台でしかないのも当然です。物価対策ダメ、能登震災対策ダメ、それなのにアメリカの言いなりに高価な武器の購入だけは爆進する。どうやっても評価できるところがありません。
 アメリカの大統領が日本にやって来るとき、成田や羽田ではなく米軍横田基地に舞い降りる。ここは大統領に限らずアメリカ人は入関手続がいらない。まさに日本は独立国ではなく、アメリカの支配する国のままなのです。
 「年寄りが長生きするから、若い人の負担が重くなる」
 国民を年寄りと若者に分断し、世代間でケンカさせ、お互いにいがみあう状況をつくり出し、権力者は腕を組んで笑っている。これが、今の日本の姿です。
 でも、年金は削られていますよ。介護保険料は値上がりしています。オスプレイとかトマホークを買うのを止めたらどうですか。アメリカからF35なんて超高値の戦闘機を買うのを止めたら、年寄りも若者もいがみあう必要なんかないのです。
 いまの日本政治のおかしさを徹底的に追求している「日刊ゲンダイ」や「文春」、そして「しんぶん赤旗」にエールを送りたいです。
(2023年10月刊。890円+税)

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