弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2024年2月11日

クマに遭ったらどうするか

生物


(霧山昴)
著者 姉崎 等 、 出版 筑摩書房

 このところクマに襲われる人のニュースがひんぱんに聞かれます。いったい、山中でクマにばったり会ってしまったら、どうしたらよいのでしょうか...。
 九州に住む私は、山道を一人歩いても、イノシシ母ちゃんに出会わない限り安全だと思って安心して歩いていますが、本州だと山口を含めてクマに遭遇してしまう危険がありますよね。まず、結論から...。
 背中を見せて走って逃げたらいけない。クマとにらめっこしって、根比べする。じっと立っているだけでもよい。動かないこと。クマと対峙したら、クマの「ワウ、ワウ、ワーッ」という、うなり声に負けないだけの声を出す。そして、低い姿勢を構える。
 子連れグマに出会ったら、子グマを見ないで、親グマだけを見ながら、静かに後ずさりする。クマは最初から人を襲う動物ではない。
 ベルトをヘビのように揺らしたり(クマはヘビを怖がる)、釣り竿をヒューヒュー音を立てたり(クマは奇妙な音を嫌う)、柴を振りまわす。予防のためには、空のペットボトルを歩きながら押してペコペコ鳴らす(奇妙な音をクマは嫌う)。
 クマは動くものには、どうしてもかかるという習性がある。クマは平坦なところでは時速60キロくらいのスピードで走る。人間が木に登っても、クマも木登りはうまいので、すぐに引きずりおろされる。
 クマは人間のほうが強いと思っている。クマは人間は苦手。
 クマは臆病だけど、人が好きで、人間の里の近くで暮らす。
人間を殺して食った経験のあるクマに会ったときは、あきらめるしかない。人間を餌としか見ていないので、手の打ちようがない。いやあ、これって怖いですね。
クマは雑食性。どちらかと言うと肉食ではなく、草食のことが多い。
 著者は、単独でクマ40頭、集団で獲ったのをあわせると60頭のクマを仕留めたという、まさにクマ猟のプロ。母親はアイヌ民族で、アイヌ民族最後の狩人でした。
12歳から77歳まで、65年間、北海道で狩人として生きてきた、著者からの貴重な聞き書きの本です。一読をおすすめします。
(2023年7月刊。840円+税)

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