弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2024年1月16日

創造論者VS無神論者

アメリカ


(霧山昴)
著者 岡本 亮輔 、 出版 講談社選書メチエ

 アメリカという国は、本当に不思議な国です。月世界を歩く飛行士がいるかと思うと、アメリカ人の40%は人間は1万年前に神によって創造されたと今でも真面目に信じているというのです。つまり、人間の先祖はサルではなくて(これは本当です)、初めから人間だったというのです。
 つまり、生物(生命)誕生から何億年、何万年もかかって進化していって人間が生まれたという進化論を信じていないわけです。
 これだけ多種多様な生命体が存在するのに、それをみな、万物の創造主は神、それも唯一神だとするのは、あまりに無理があると私は思うのですが...。
 アメリカには無神論者はわずか4%しかいない。
 「ある人が心の底から神を信じているのか、それとも神を信じるのは良いことだと信じているのか、両者の区別はそれほど明確ではない」
 この指摘には、まったく同感です。無神論者の私だって、「苦しいときの神頼み」はしていますし、ゲンをかついだり、お寺の仏像の前では深々と頭を下げて、お願いごとを心の中で唱えます。そのとき、何のこだわりもありません。
 スパモン教なるものが存在するというのには驚かされました。「空飛ぶスパゲッティ・モンスター教会」です。
 1952年にアメリカはテネシー州のデイトンという田舎町で起きたモンキー裁判の紹介には目を洗わされました。進化論を学校で教えた若い教師(スコープス)がバトラー法違反で裁判にかけられ、全米の耳目を集めた事件です。
 そもそも、この裁判は、衰退してしまった町(デイトン)の町おこしとして全米から注目してもらおうとして事件になったものだというのです。これには心底から驚かされました。全米の話題になって観光客や投資を呼びこもうと町の有力者たちが考えたというのです。いやはや、まったく呆れてしまいました。
 そして、裁判は案の定、全米の注目を集め、マスコミが乗り込んできて裁判は全米に実況中継されます。当初は進化論否定派が有利でしたが、進化論者の弁護士は聖書絶対派に質問して、局面が大転換します。
 つまり、聖書絶対論者はあまりに歴史的事実と違いすぎるので、身がもちません。
 聖書絶対論者によると、天地創造は紀元前4004年10月23日になる。多少の前後はあっても、だいたい、それくらい。ところが、それでは科学的に何万年も前のことだと証明されているのと、あまりに違う。
 また、「地球は6日で創造された」というのも、いくらなんでも...。
 アメリカの歴代の大統領は、就任式のとき、聖書に手を置いて宣誓する。また、折にふれて神の名を口にする。つまり、アメリカはキリスト教国家だということ。でも、イスラム教徒や仏教徒もいるんでしょ...、どうなってんのかしらん。
 それでも、今後は、無神論者より信者のほうが増加するとみられているのです。イスラム教徒はキリスト教徒と同じく世界人口の3割を占める(2050年)。そして、ヒンドゥー教徒は14億人になるだろう...。いやはや、日本は世界のなかで、きわめて特異な国なんですね...。改めて知って、驚きました。
(2023年9月刊。1800円+税)

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