弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2023年12月12日
仁義ある戦い
社会
(霧山昴)
著者 杉山 大二朗 、 出版 忘羊社
アフガニスタンで中村哲医師が殺害されたのは、もう4年前のことになります(2019年12月4日)。
福岡県飯塚市の生まれである著者は、ペシャワール会の現地派遣ワーカーとして数年間、中村哲医師の下で働いていました。その様子が著者によるマンガも添えられていて、とてもよく分かります。
現地のワーカーとして、事務作業にも従事していますが、日本人スタッフのまかない料理づくりのところはとくに興味を惹きました。日本人はアフガニスタンに行っても日本料理を食べたいのですよね。よく分かります。重労働のうえ、安全確保のため、町に出てウロウロするなんてことも許されないのですから、せめて美味しい日本食を食べたいですよね...。
中村医師は、カレーが大好きで、カツカレーが好物だそうです。貧しい九大医学部生のときの食事以来のようです。
それにしてもよく出来たマンガが途中にはさまれています。誰かプロに依頼したのではないのか、そう思わせるほど素晴らしい出来事のマンガなので、状況がよく理解できました。
ハンセン病の患者であり、ペシャワール会の守衛もしていたサタール氏についてのマンガは出色です。これだけでも、この本を読んだ甲斐があります。
患者は日本人スタッフの舌に合うような「まかない料理」をつくるよう中村医師に指示されました。でも、問題は食材の確保です。食材がなければ、どうにもなりません。
著者は、小学生のころから、自分で釣った魚を三枚におろしてさばけたというのです。偉いものです。そして、世界中を放浪したときにも各地の料理を見よう見まねでつくったのでした。いやあ、たいしたものです。その腕をペシャワール会の現地スタッフとしてアフガニスタンで思い切り生かしたのでした。
ジャララバード(アフガニスタン)にあった日本人舎舎のキッチンでヘッドライトの灯りで料理している著者の写真があります。チャーハンでもつくっているのでしょうか...。
あちらでは、インスタントラーメンは、病人しか食べることが許されない貴重品だったのです。
著者が手がけたまかない料理もマンガで紹介されています。白菜を手に入れて漬物をつくったというのです。すごいですね、塩と昆布を使います。
豚肉はタブーなので、豚肉以外のもので代用する豚汁もどきというものもあります。鶏肉や羊肉は高くて、牛肉のほうが安上がりなのです。
鯉の南蛮漬けもつくりましたが、日本人スタッフには好評でも、アフガニスタン人スタッフには不評でした。やはり、人の好みは生来のものがありますよね。
アフガニスタンはイスラムの国なので禁酒。日本人スタッフはこっそり飲むこともなかったようです。酒を飲まなくても平気になったと著者は書いています。日本に帰国したら、浴びるように飲んだそうですが...。
それにしても中村医師はよく働いたようですね。毎日、毎晩、1時間以上もミーティングをしていたそうです。いやあ、これはすごいことです。よくも倒れませんでしたね。疲れますよね、ミーティングって...。中村医師は後継者はいるかとの質問に対して、「用水路そのものが後継者だ」と答えたとのこと。
日本政府は今、世界各地に武器を輸出しようとしています。自民党と公明党の政権が戦争でもうけようとしているのです。
私は中村医師そしてペシャワール会のような、地道な用水路づくりこそ日本のやるべきことだと改めて思いました。
武器をつくって輸出して、軍需産業はもうかり、そのおこぼれを自民・公明の政治家たちはもらえるのかもしれません。でも、それって平和のためではありません。戦争で私腹を肥やそうとしているだけではありませんか...。ホント、腹が立ちます。
いい本でした。お疲れさまでした。
(2023年5月刊。1700円+税)