弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2023年11月14日

台湾侵攻に巻き込まれる日本

社会


(霧山昴)
著者 半田 滋 、 出版 あけび書房

 「北朝鮮や中国が攻めてきたら、どうする!」
 この不安と焦燥に駆られた人々が5年間に43兆円もの超巨大軍事予算を精神的に支えています。これまで軍事費は年に5兆円を上回っただけでも大問題だったのに、今や年間7兆円を軽く上回る軍事予算です。
 「北朝鮮がミサイルを発射した」と言ってJアラートを発令し、恐怖をあおり立てる政府広報。同じことを韓国がやっても、報道すらされません。北朝鮮のロケット(「ミサイル」の正体)は宇宙空間を飛んでいるのです。「日本の上空」ではありません。「ミサイル対策」と称して、学校や役所で机の下に潜り込む訓練をしていますが、戦前の防火(消火)バケツリレーと同じく、単なる気休めでしかありません。意味のないことはやめるべきです。政府は、それよりイスラエルに軍事行動の停止を求めるべきです。
 自民・公明の岸田政権はアメリカの兵器を「爆買い」し続けています。トマホークなんてスピードが遅いので、もはやアメリカ軍は使っていないとのこと。そして、オスプレイは多くのアメリカ兵を殺してしまった「未亡人製造機」と言われるほどの欠陥機。それを今度は佐賀空港に配備するのです。本当に許せません。
 「戦争が始まったら、シェルターに逃げて...」
 地下のシェルターに逃げ込めて一時的に助かったとしても、地上に誰もいなかったら、どうやって生活していくというのですか...。食料がいつまでもあるはずはありませんよ。
 宮古島に住む全住民を避難させるのに必要な飛行機は363機、船は109隻。そんな大量の飛行機と船が確保できるはずはありません。同じく、沖縄県民146万人を九州に避難させるとのこと。うまく運べたとしても(ありえませんが)、いったい九州のどこにこれだけの人を収容するというのでしょうか...。
 日本政府は、公式見解では台湾を独立国としてみていません。なので、台湾は日本と「密接な関係にある他国」とは言えません。
 アメリカは大量の半導体を必要としている。台湾のメーカー(TSMC)は、世界の半導体シェアの6割を占めている(高性能のものに限れば9割)。だから、台湾を確保しておかないと、アメリカという国自体が存続できない。
 中国は既に空母を2隻保有し、戦闘機も2000機もっている。無人の岩があるだけの尖閣諸島をめぐって武力侵攻するのは、中国の国益に合わない。
 アメリカとアメリカ軍を守るため、日本は集団的自衛権を行使する。つまり、日本を守るためではなく、外国(アメリカ)を守るため、日本人青年の血を流させようということ。
 日本がアメリカから「爆買い」するトマホーク400発を保有したとしても、中国は巡航ミサイルをすでに2200発も保有している。こんな格差があるのだから、「抑止力」が働くはずもない。
 アメリカからオスプレイ17機を購入する代金は3000億円。日本全体の司法予算はそれとほぼ同じの3300億円。しかも年々少しずつ減っている。裁判官の人数は増えていないどころか、減っている。思わず涙が出てしまいます。
 大軍拡予算がすすめられるなかで日本の軍需産業(「死の商人」たち)は喜びに奮いたっている。三菱重工業は誘導弾の新規開発に奔走している。まさしく、金もうけのためなら、何事も身を惜しみませんという姿勢です。
 自民党・公明党の脅しとウソに負けないようにしましょう。それにしても先日の参院選(補選)の投票率の低いこと...。6割以上の人が投票所に行っていません。これでは日本は救われません。
 著者の本は、いつ読んでも具体的な状況が的確に紹介されていて、大変勉強になります。
 一読を強くおすすめします。
(2023年10月刊。1980円)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー