弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2023年11月12日
石製模造品による葬送と祭祀
日本史(古代史)
(霧山昴)
著者 佐久間 正明 、 出版 新泉社
福島県の郡山(こおりやま)盆地の南端、阿武隈(あぶくま)川東岸の丘陵にある正直古墳群には、滑石などのやわらかい石で、刀子(とうす)や鉄斧(てっぷ)剣、鏡などをかたどった石製模造品が祭祀遺物として副葬されていた。
いやあ驚きました。大量に発掘・発見されています。所在地は郡山市です。
この古墳群には50基以上の古墳があったようです。1970年12月にブルドーザーが掘削していると、凝灰岩(ぎょうかいがん)の石組が出てきた。内部が真っ赤に塗られた箱式石棺だった。
残念なことに石棺に人骨はなかった。酸性土壌のため、石棺内に流入した土砂に埋もれた人骨は残らなかった可能性が高い。
そして、緑色を帯びた石材が使われていて、基部には紐(ひも)を通すための貫通孔が認められた。赤色顔料は、蛍光X線分析によると、水銀朱であることが判明した。
そして、残っていた人骨から次のことが判明した。
男性で年齢は30歳前後。別のところからは、妊娠した徴候(痕跡)があることから、顔は平坦、身長は157センチの女性。
いやあ、すごいです。骨の断片から、年齢も身長も判明するのですね...。石製模造品は古いものほど写実的で、新しいものほど簡略化されたものばかり。ともかく、驚くほどよく出来た模造品です。圧倒されます。
発掘調査は、ひとつひとつはほとんど無意味な作業としか思えませんが、当たれば、それまでの苦労が十二分に報われる瞬間になります。これはもう、止められませんよね。
発掘調査の現況について、写真とともに知ることができました。発掘現場の方々は、お疲れさまです。
(2023年2月刊。1700円+税)