弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2023年11月 7日
僕の好きな先生
社会
(霧山昴)
著者 宮崎 亮 、 出版 朝日新聞出版
「維新」は大阪の教育をメチャクチャにしてしまいました。その結果、大阪の学校の教員を志望する人が激減し、途中退職者も続出しています。
維新は学校を「商品」製造工場のように錯覚し、成績主義・競争主義で教師と先生を追い立てています。学校を学力成績の点数で評価するなんて、根本的な間違いです。聞くだけで、「アホちゃうか」と関西弁でこきおろしたくなります。
松井一郎大阪市長(当時)が、コロナ禍がひどい状況で「小中学校は自宅オンライン学習を基本とする」と、突然に言い出して、大阪全市の学校が一大パニックに陥りました。
松井市長の思いつき、いつものパフォーマンスでした。学校を所管する教育委員会の意見も十分聞かないまま記者会見したのです。まったく無責任きわまりありません。
これに対して、現職の小学校校長であった久保敬(たかし)氏が大阪市の教育行政を批判する文書を松井市長に送ったのです。現職の校長が市長を批判する文書を送付した。これは大きなニュースになりました。その結果、自宅オンライン学習は撤回されたのです。ところが、久保さんに対しては「文書訓告」処分が下されました。ひどい話です。
久保校長の教え子にお笑いコンビ「かまいたち」の濱家隆一がいました。久保校長の退職お祝い会に濱家は5分間のメッセージ動画を送ったそうです。そこでは、30年も前の小学校の担任との出来事を昨日のことのように濱家は紹介しました。そして、濱家は小学生のときにもらっていた「学級便り」も全部保管していたのです。それほど記憶に残る担任(教師)でした。
濱家は、「学級便り」のなかで、将来の夢は「マンガ家、まんざい師」と書いていました。これは実現したのですね。すばらしいことです。
「細かいことをバーッて思い出せるのは、本当に楽しかった人やと思いますね。久保先生からは、まわりの友だちを思いやることを教わりました。みんなで目標に向かって一致団結することとか、まわりの人と調和するとかっていうのは、ほんまに久保先生から学んだことです」
先日、大阪で久保先生の話をじかに聞くことができました。腹話術も少しする久保先生は、なるほど教師人生に全力で打ち込んだというオーラを感じました。こんな教師にめぐりあえた子どもたちは本当に幸せです。
子どもを大切にする教師をもっともっと大切にしなければいけないと、つくづく思いました。維新や自民党のような、表面的な成績だけしか目を向けない教育なんて最悪です。
久保先生の話を聞いて、すぐに会場で売られていたこの本を買い求め、帰りの新幹線の中で完読しました。
(2023年9月刊。1760円)