弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2023年10月 2日
ある日、森の中でクマさんのウンコに出会ったら
生物
(霧山昴)
著者 小池 伸介 、 出版 辰巳出版
ツキノワグマは九州では絶滅したとされていますが、四国にはまだいるようです。もちろん関東周辺にはクマがたくさんいます。
いま日本の山には野生の鹿が大繁殖して、森林の草を食べ尽くしています。そのあおりを食ってクマが食料を求めて人里(ひとざと)に出現しているのです。困ったことです。
ツキノワグマの研究者である著者は、これまでの25年間に3000個以上のクマのウンコを集めて研究室に持ち帰り、さばいて分析し研究してきた。そのおかげで、博士号をとり、定職(教授)にありつけている。
クマのウンコは臭くない。むしろ、芳香がある。食べたもののにおいがする。桜の花や実を食べたクマのウンコは桜餅のようなにおいがするし、植物の葉を食べたらお茶の葉のようなにおい。サルナシを食べると、キウイフルーツのにおいがする。岩手県のリンゴ園のリンゴを食べたクマのウンコは、見た目も香りもリンゴジャムそのもの。なめてみると、見かけ倒しで、ほとんど味はしなかった。うへーっ、クマのウンコをなめるんですか・・・。
クマの体毛を調べたら、何を食べたかが判明する。毛を質量分析計にかけると、毛に含まれる窒素や炭素の割合がわかる。たとえば、植物を中心に食べていると窒素の値が低くなり、肉食気味になっていくと窒素の割合が上がっていく。
クマは、冬眠する。この冬眠に備えて、9月から11月までの3ヶ月間に1年の8割分のカロリー摂取量を食い溜めしている。この時期は好物のハチミツには見向きもせず、せっせとドングリを食べる。
クマは大きな岩をゴロゴロところがし、その下にあるアリの巣をべろべろなめて大量のアリを食べる。
クマは果実の旬(しゅん)を知っていて、鳥によって果実が食べられる直前のタイミングで木に登り、果実をむさぼり食べる。
クマの食事の9割は植物であり、一つの巨大なウンコに何百、何千という植物のタネが入っている。
著者は、山中で見つけたクマのウンコをビニール袋に入れて、その全部を持ち帰り、研究室で水洗いして内容物を分類・分析するのです。植物のタネを同定するのに苦労しました。
冬眠中のクマの生態を研究することによって、長時間を要する宇宙旅行で乗組員(人間)の代謝を抑えられないかという研究も進んでいるとのこと。クマを知ることは、こんなメリットもあるのですね。とても興味深い本でした。
(2023年7月刊。1650円)
田の稲刈りも間近になりました。畔に赤い彼岸花が咲き誇っています。
わが家の庭にはリコリスのクリームの花が一斉に咲いて、それは見事なものです。
リコリスは彼岸花の仲間です。いつ植えたのか、もう記憶がありませんが、どんどん勝手に増えていきました。ある時期に一斉に花を咲かせるという自然の摂理には毎度のことながら驚かされます。
そばにはピンクの芙蓉の花が咲き、地面にはサツマイモが生い茂っています。まだ収穫するのは先のことです。ついに秋本番が到来しました。