弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2023年9月27日

日本語の発音はどう変わってきたか

社会


(霧山昴)
著者 釘貫 亨 、 出版 中公新書

庭をヒラヒラと舞い飛ぶチョウチョ(ウ)を、昔は「てふてふ」と書いていた、というのは有名な話です(きっと今どきの若い人は知らないのでしょうね...)。
平等、如来(にょらい)、男女(なんにょ)、これら仏教用語は呉音(ごおん)。仏教を中心に、5~6世紀の中国六朝時代の漢字音のこと。8世紀の唐代長安音は漢音(かんおん)。   
漢音は、内裏(だいり)、図書(としょ)、経典(けいてん)、古文(こぶん)など。日本を「にほん」「にっぽん」と読むのは「日」を呉音で読んでいる。漢音では「日」は「ジツ」。ここから「ジパング」が出てくる。
奈良時代のハ行音はパ、ピ、プ、ペ、ポに近かった。古代日本語にhの音は存在しなかった。平安時代はじめの「ハ」の音は「パ」より「ファ」に近い音だった。戦国時代にやってきた宣教師によるキリシタン資料では、鳩はファト、光はフィカリと表示されている。
平安朝の桓武天皇は、呉音ではなく漢音を学ぶよう命じたが、失敗した。呉音は、仏教と日常生活に染みついていたから。
東京語が成立したのは明治30(1897)年ころ。江戸末期までは混乱していた江戸東京方言がようやく東京語に集約した。
漢字、ひらがな、カタカナそしてローマ字と、日本の文章には4種類の文字が混在している。これほど複雑な文字体系は世界に類をみない。このような世界一複雑な日本語の文字体系は平安時代に始まった。
9世紀半ば以降、日本の知識人は、漢字漢文、ひらがな、カタカナを自由に使いこなしてきた。
藤原定家は、和歌を書くのに総仮名を漢字かなまじりに変えた。歌意の理解のしやすさを重要視した。
この本によると、五十音(あいうえお)は純日本製だと思っていると、実はインド製だそうです。円仁がインド人僧(宝月三蔵)が口伝を受けて日本にもち帰ったというのです。
英語で「円」をyenと表記するのは、日本人が「y音」を自覚しないまま、「え」を「yen」と発音しているからだというのにも驚きました。日本語にまつわる面白い話が満載の新書です。
(2023年7月刊。840円+税)

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