弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2023年9月13日
世に資する、信号電材株式会社の50年
社会
(霧山昴)
著者 糸永 康平 、 出版 石風社
福岡県の南端・大牟田市にある会社が日本全国至るところにある信号機の関係で全国50%のシェアもっている。交通信号機をつくるメーカーだ。遠くドバイやドイツ、アメリカをふくめて世界にも目を向けている。なぜ、どうやって...、その疑問にこたえる本。
信号電材株式会社の設立は1972年10月のこと。創始者の糸永嶢(たかし)48歳、従業員5人、売上高2千万円の極小企業としてスタートした。
まずは交通信号用鋼管柱を考案し、鋼管内に入線することで、外部配管材をなくした。鋼管柱は軽量化し、施工性の良いものにしたことで、いくつかの県警本部から採用され、売上高が1億円をこえた(1976年)。
次に、1987年、日本初のアルミ製車両灯器の量産に成功した。
そして、「西日(にしび)対策灯器」という難題に挑戦する。西日があたると、信号灯が乱反射して、全点灯状態に見えてしまい、どれが点灯しているか分からなくなるという問題だ。これは交通事故発生の原因となっていた。
これを克服するため、多眠レンズ式の疑似点灯防止機能付ランプユニットを開発し、外部からの太陽光を遮断し、灯器内部光を通過させるという画期的なレンズを開発した。
1992年、東京でのテストで最優秀と評価され、1993年、警視庁が「西日対策灯器」として採用した。
1995年、昼間は明るく、夜は減光する自動調光機能付きのLED矢印灯器を製品化し、京都府警が採用した。
2003、2004年ころ、業界で談合疑惑問題が発覚し、利益率が低下した。
2009年には売上高が50億円台となった。そして、2009年に経理課長を解任するという不祥事が発覚し、2010年には国税局の調査を受ける。
2014年、低コスト型信号灯器を開発。全面アルミ製で軽量化、省力化もすすんでコストダウンを達成。西日による表面反射をおさえ、強風にも積雪にも強くなった。
県警ごとに信号灯は仕様が異なっているというのには驚きました。全国統一ではなく、500種類もあるそうです。LED素子を192個から108個へ減らし、消費電力は10VA以下。より西日に強い歩行者用LED灯器も開発した。
信号電材の社員は、今や150人(年商60億円)。この本には書かれていませんが、従業員はかなり国際色も豊かだと聞いています。これからも発展してほしい会社です。
(2023年7月刊。2500円+税)