弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2023年9月 9日
大津絵
日本史(江戸)
(霧山昴)
著者 クリストフ・マルケ 、 出版 角川ソフィア文庫
大津絵って、聞いたことがありませんでした。江戸時代の庶民に人気があった絵です。そのころ、浮世絵ほどの人気があったのに、今やすっかり忘れられてしまいました。でも、今でも滋賀県には大津絵を扱う店があるそうです。いかにも素朴な絵です。鬼まで可愛らしく描かれています。
東海道最大の宿場であった大津、その西端の追分や大谷で旅人に対して大津絵は土産品として売られていた。
大津絵は、神仏画、世俗画、戯画など、画題は120種以上。量産するため略画化され、型紙で彩色もされた。
大津絵は土産品として、浮世絵と同じく手軽に買い求められ、庶民の日常生活に浸透していた。また、護符としても身近なものだった。
大津絵は江戸時代の初期、寛永年間に始まった。大津絵の普及には、江戸時代に盛んだった伊勢参りも背景としてあげられている。
大津絵に登場してくる鬼は悪い怪物ではなく、人間の善行に触発され、罪をあがなおうとしている。
著者は、浮世絵ファンは世界中に多いが、同じ江戸時代の代表的な庶民絵画である大津絵について、ほとんど知られていないことを残念に思っています。カラー図版をみたら、なるほど、その思いがよく理解できます。
(2016年7月刊。1400円+税)