弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2023年8月31日
半導体産業のすべて
社会
(霧山昴)
著者 菊地 正典 、 出版 ダイヤモンド社
世界の半導体市場のなかで、日本は1990年には49%と世界の半数を占めていた。ところが、今では凋落の一途で、2020年には、わずか6%、今後さらに低下していく見込みだ。同じく半導体メーカーの売上高ランキングをみてみると、1992年には世界トップ10(テン)のうち、日本のメーカーが6社いた。ところが2021年にはわずか1社のみ。
「ジャパン・アス・ナンバーワン」なんて時代は、今やすっかり過去も過去の話なんです。
なぜ、日本は半導体の世界でこんなに凋落してしまったのか...。
第一に、アメリカと1986年に結んで「日米半導体協定」によって、日本はアメリカにコストデータ等の報告義務が課され、またアメリカの製品の購買義務まで課された。
韓国、中国、台湾は政府の手厚い庇護を受けて伸ばしていたのに、日本政府はアメリカの言いなりでしかなかった。
第二に、日本のメーカーにおいて半導体事業は一部門でしかなく、メーカー内の「新参者」扱いをされていた。要するに、経営陣が育成の目をもっていなかったということ。
第三に、日本の企業トップは半導体に関わる先端的製造技術が求められていることを理解できず、従来の立場に固執するばかりだった。
第四に、半導体業界の不振に国が適切な手をうたず、弱者連合になってしまったこと。
この本の著者は書いていませんが、科学・技術の自由な発展のためには、学問そして科学・技術の世界に権力が目先の成果ばかりを求めて介入してくるのは大きな間違いだということです。それはいったい何の役に立つのか、そんな愚問を言わず、投げかけず、学者・科学者に好き勝手にさせておくと、そのなかで、いつか画期的な発見があるのです。目先にとらわれすぎてはいけません。
この本では、半導体とは何か、どのようにしてつくられるのか、集積回路(IC)とは何か、どうやってつくるのかも図で示しながら解説されています(一見やさしい解説なのですが、基礎が分かっていない私には理解不能でした)。
日本の半導体装置メーカーの売上高は2013年に100億ドルだったのが、2021年には3倍に増加している。そして世界シェアは最高だった2012年の35%が2021年には28%へ、7ポイントも低下している。これは、世界全体で伸びているなかで、相対的に低下しているということ。
世界最大かつ最強の半導体ファウンドリーであるTSMC(台湾)が、熊本に新しい工場をつくろうとしている。これには、ソニーやデンソーそして日本政府が膨大な補助金をあてている。ところが一方、アメリカでも同じようにTSMCはアリゾナ州に1.3兆円を投じて新工場をつくろうとしている。また、インテルやサムスンもオハイオ州やテキサス州に新工場をつくりつつある。これらに対して、アメリカ政府は6兆円の補助金を支給する。このように、アメリカは国内に半導体産業の生産工場を確保することで、中国との覇権対立を乗り切ろうとしている。
「ジャパン・アズ・ナンバーワン」という掛け声で酔っ払ってしまった日本政府には反省してもらうしかありません。それにしても、半導体産業も食料自給率の確保と同じように、日本にとって大切なものだということを改めて認識させられました。
ただ、熊本にTSMCが進出してきて、地下水の枯渇と汚染を私は心配しています。本当に大丈夫なんでしょうか...。
(2023年6月刊。2200円+税)
山の手(徒歩5分で登山口)の高級住宅街(高台です)に住んでいますので、自然をごく身近に感じる生活です。
家の中は、大小のクモをあちこちに見かけます。ときに、台所には小さなアリが行列をつくっています。ナメクジが出てくることもあり、ゴキブリやムカデが出てきて驚かされます。風呂場などに小バエが湧いてきます。夜になると、窓にヤモリがぺたっと張りつきます。
庭にはセミの抜け殻を見つけますが、セミは減りました。トンボはシオカラトンボやアキアカネです。チョウはクロアゲハ、そして、ミツバチやマルハナバチが花の蜜を吸っています。アシナガバチがわが家に巣をつくろうとしている気配がありますので、その予防のため蚊取り線香を軒下のあちこちにぶら下げています。
台所の生ごみを入れたポリバケツにはウジムシが湧いていますので、満杯になると庭に穴を掘って埋め込みます。おかげで庭の土は黒々、ふかふかです。アスパラガス、そしてサツマイモを楽しみにしています。ブルーベリーは終わりました。ミミズを狙うモグラがいますし、土ガエルも見かけます。気をつけなくてはいけないのがヘビです。40年前に入居した当初から、庭にヘビが住みついていますが、いったいヘビは何を食べているのか不思議です。
庭の隣の藪からタヌキが朝、出てきて散歩しているのを見かけたときはびっくりしました。夜道をイタチが横断することもあります。
いま、庭にはフジバカマを植えています。秋になったらアサギマダラ(チョウ)がやって来るのを待っているのです。
田舎で生活するというのは、こういうことです。