弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2023年7月28日
私たちは黙らない!
社会
(霧山昴)
著者 平和を求め軍拡を許さない女たちの会 、 出版 日本機関紙出版センター
異様な雰囲気の日本です。諸物価が高騰し、電気代も値上げされてエアコンをつけずにガマンしていて室内にいるのに熱中症に倒れる高齢者が続出しています。若者は非正規労働のため低賃金だし、安定性にも欠けているため結婚できない。少子化になるのも当然の状況。ところが、福岡にはタワーマンションが次々に建っています。最低1億円、最高4億円なのに、完成前に完売...。いやはや、貧富の差がこんなにもあからさまに拡大しています。
ところが、日本人は若者もふくめて、あくまでもおとなしい。かのアメリカだってハリウッドで俳優組合がストライキに立ち上がっているのに...。フランスは街頭で暴動まで起きていますよね。日本では投票率は5割以下、若者に至ってはデモや暴動どころか、せいぜい3割しか投票所に足を運ばない。自民党の大物政治家は、昔から投票所に足を運ぶなんてムダなことはしなくていい、自分たちにまかせとけ...と高言していて、日本の若者たちは、まさにそれを真に受けている(としか思えない)。スーパーへ夕方になって出かけて半額割引になった総菜を買い込む。トイレは3回ごとにまとめて流す。お風呂も毎日は入らないで、なるべくシャワーですます。こんな日本は、もはや「豊かな国」ではない。
貧困にあえぐ国民がいるのに、不要不急かつ、本当に必要なの...と疑問に思えるトマホークを400発もアメリカから買い付けようとしているニッポン。在庫一掃セールとまで言われているアメリカからの武器の爆買いが、ますますひどくなっています。
「核には核で」という、マッチョな思想むき出しの日本。
隣国にケンカを売ってばかりいるニッポン。
この10年間、賃金が上がらず、むしろ停滞しているのは、先進諸国のなかで日本だけ。
ところが、取締役報酬として1億円以上もらっている人たちは、ぐんぐん増えている。これって、あまりに不公平ですよね。本当は、日本の未来は、「人材育成、教育投資」にしか道はない(もっとも、人間を人材とみるのはおかしいという根本的な疑問もありますが...)。
大学の学資を無料にし、学生食堂のランチ(定食)は学生だったら無料で食べられるようにしたら、どんなに学生たちは生き生きと学べるでしょうか...。学生アルバイトが外食産業を支えているなんて、間違ってます。
外国人の技能労働者の多くが日本人よりもはるかに劣悪な悪条件のもとで働かされている。ところが、彼ら彼女らを雇っている日本人が大いに搾取して肥え太っているかというと、必ずしもそうではないのです。となると、産業構造自体の抜本的な見直しも求められているということです。
自民党の「国防」族のいう「国防」のなかに「民」は入っておらず、「国」のみ。それは軍需産業の育成・補助のためなら惜し気もなく税金をつぎ込めということ。
日本の食糧輸入相手国の第2位は中国。日本にとって中国は輸入総額の4分の1を占める国。そんな中国と日本が戦争するなんて、少しでもまともな頭の持ち主なら、まったく考えられないこと。
日本を本当に活性化しようと思うのなら、「身を切る改革」なんてインチキに踊らされず、子どもたちが学校で自由に伸びのび学べるように、少人数学習を実現し、それを具体化するために教職員を大幅に増やすことです。いま、全国で小中学校の統廃合がすすんでいます。でも、学校運営の論理として、効率化というのはまったくふさわしいものではなく、かえって有害そのものなんです。 「戦争は教室から始まる」というコトバがあるそうです。初めて聞きましたが、さもありなん、と思います。だから、「固定教科書」にするための検定は止められないのですね。
175頁のブックレットですが、ずっしり重たい内容でした。
大阪の石田法子弁護士が最後に、「まだ、みんなでなら、戦争なんか追い出せます」と呼びかけています。そのとおりです。戦争したがっている連中は決して一枚岩ではありません。橋下や吉村のようにウソっぱちだし、強がりを言っているだけなのです。元気を出して、もうひとがんばりしましょう。
(2023年5月刊。1300円+税)