弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2023年7月25日

縄文人がなかなか稲作を始めない件

日本史(古代)


(霧山昴)
著者 笛木 あみ 、 出版 かもがわ出版

 縄文時代が始まったのは今から1万6500年から1万5000年前のこと。旧石器時代にはなかった「土器」の出現・普及による。そして、それから1万3000年ほど続いた。
縄文時代の人々は、猟師でいて、かつ漁師、植物採集しながら百姓そして職人だった。
 縄文時代は温暖化によって、現在よりも暖かかったので、山にも海にも食糧が豊富にあった。平均寿命は30歳くらい。でも、60歳をこえた「老人」の人骨もかなり出土している。虫歯も多かった。土器によって煮炊きが可能になった。焼く、煮る、蒸す、干す、茹(ゆ)でる、燻製、漬物、パンにおかゆにクッキーにハンバーグと、なんでもありの食生活。主食は、クルミ、ドングリ、クリ、トチなどの堅果(けんか)類をアク抜きして食べていた。
 日本全国に2700もの貝塚が発見されている。
 アサやカラムシ、アカソなどの植物の繊維を編んでつくった布も出土している。シカの角や魚の骨で縫い針をつくっていた。土偶の髪型は奇抜なもの。特別のイベントのときの髪型。耳にはピアス、イヤリング。首にはネックレスやペンダント。腕にブレスレット。足にアンクレット。さまざまなアクセサリーを身につけていた。
 新潟県産のヒスイ、長野県産の黒曜石が、全国各地の遺跡から出土している。
 縄文習俗で痛そうなのは抜歯。他人(ひと)から見える位置にある、前歯や犬歯を抜いている。
 「火焔型土器」は、まったく無駄な装飾としか言いようがない。ところで土偶は、そのほとんどが意図的に壊され、そして地中に埋められた。
 縄文時代の女性の死因として、出産がとても多かった。出産経験者の85%が若くして亡くなった。
 4300年前、日本列島の気温が下がり、列島の食生が変化した。渡来人が持ってきたイネを耕作するようになり、弥生時代が始まった。それでも、しばらくは西の弥生、東の縄文という構図が200年も続いた。中部・関東でイネの栽培が始まるのは、弥生時代中期のころ。九州にイネが伝わってから800年もたっている。
 1万年以上も続いた縄文時代の具体的イメージがつかめる本です。
(2022年12月刊。1500円+税)

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