弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2023年6月11日

うたいおどる言葉、黄金のベンガルで

アジア


(霧山昴)
著者 佐々木 美佳 、 出版 左右社

 インドではなく、ベンガルと言われても、そんな国(バングラディシュ)、どこにあったかな...、それくらいの知識しかありません。ところが、なんとなんと、ベンガル語を話す人は3億人もいて、日本語を話す人よりはるかに多いのです。
 そして、そのなかには、私も名前くらいは知っている、グラミン銀行の創始者ムハンマド・ユヌス、文学界ではタゴール、そして映画監督のサタジット・レイ。新宿・中村屋のカレーは、ボーズというベンガル人が考案した。いやあ、こう言われると、ベンガル語・バングラデシュって、日本人にも意外に身近なものなんですね...。
 さて、著者は東京外語大学でヒンディー語学科を卒業しています。ヒンディー語とベンガル語は、どれほど違うのでしょうか...。
ベンガル語は、日本語ネイティブにとって、世界で一番簡単な言語。日本語の五十音は、サンスクリット語の音韻体系をもとにつくられているので、サンスクリットが起源のベンガル語と日本語の五十音は大変よく似ている。
ベンガル語は、言語のもつリズムが大変心地良い。
 「オ.オネク.モジャ!」(すごく美味しい)
「アロ.カーオ」(もっと食べろ)
「バス.バス.バス!」(もういい、もういい)
食事のあとは、砂糖たっぷりの甘いチャ(チャイ)。
バングラディシュでは、今も人力の「リクシャ」が大活躍している。明治期に日本からアジア諸国に輸出された人力車をもとにした乗り物。
バングラディシュを生き抜くには黙っていてはいけない。主張することが必要。リクシャに乗る前に、きちんと価格交渉することが不可欠。
「ホエ.ジャエ」(まあ、そのうちなるようになるよ)
「チンタ.ナイ」(心配しないで)
空には 星と太陽
世界には 命が満ち
住みかを見つけた私の
歓喜の歌があふれ出す
(タゴール・ソング)
東京の新大久保にあるイスラム横丁には、ネパール人の店、インド人の店、バングラディシュの店、パキスタン人の店といった具合に国ごとに分かれた店が並んでいる。まだ行ったことがありません。ぜひ一度、行ってみましょう。
ベンガルには、6つの季節がある、春、夏、雨季、秋、晩秋、そして冬だ。
悲しみがある 死がある 離別がある
それでも 平穏や喜びでは 繰り返し蘇る
絶え間ない生命の流れは 太陽・月・星を輝かせる
森には春が訪れ、さまざまな色を放つ
(タゴール・ソング)
行ってみたいとは思いますが、ベンガルってとても遠い気がしてなりません。
(2023年2月刊。1800円+税)

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