弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2023年5月26日

郡司と天皇

日本史(古代)


(霧山昴)
著者 磐下 徹 、 出版 吉川弘文館

 奈良時代を中心とする日本古代の地方豪族と天皇との結びつきを論じた本です。
 かの有名な空海は、郡司一族、すなわち地方豪族の出身だった。
古代の僧侶は、郡と地方とを頻繁に従来して活動していた。郡司の上司にあたる国司は、都で生活する貴族、官人が選ばれ、任意に赴任する。いわば中央派遣官で、任期は6年、4年そして5年がある。
 郡司は、現地の有力者である地方豪族のなかから選ばれ、任期の定めのない終身の任とされた。つまり、郡の統治は、現地の地方豪族にまかされていた。
 郡司の負担が大きくなっていくと、地方豪族たちは、負担の大きい郡司の地位を忌避するようになった。郡司の任用では、定められたルールに反する申請があっても、直接天皇に認められたら、可能だった。
 郡司を輩出するような地方豪族が複数競合していた。地方出身者に多く与えられる外位(げい)という職があった。郡司は実はひんぱんに交替していた。
 耕地開発を率先していたのは、郡司層を構成する各地の地方豪族たちだった。
 三世一身の法でも、いずれは開発した土地が国家に回収されてしまう。そこで、743年に、墾田永年私財法が制定された。
地方豪族から成る郡司に焦点をあてて論じている本です。
(2022年10月刊。1700円+税)

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