弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2023年5月 7日

上海

中国


(霧山昴)
著者 工藤 哲 、 出版 平凡社新書

 私もかなり昔に上海に行ったことがあります。超近代的な巨大都市なので、まさに圧倒されました。恐ろしい上海の現実を真っ先に紹介します。
 上海では毎年30人以上の日本人が死んでいる。2004年には43人もの日本人が死んだ。とはいっても、この分母は大きいのです。上海市だけで4万4000人の日本人がいる(2012年には7万9000人)。
 日系企業は上海市に1万あり、世界一位。日本人学校の生徒数は2200人、世界中に90ある日本人学校のなかでバンコクに次いで多い。そして世界で唯一、高等部がある。
死因のうち、病死では、心臓疾患と脳疾患、脳梗塞が増えている。上海に居住すると、緊張感が強いられ強いストレスがかかるところなのだ。そして、いたるところに監視カメラがあり、顔認証ですぐ街角での違反行為が摘発される。
 スマホなしでは生活できない。あらゆるサービスがスマホと連動している。
 建物が高層化しているため、街頭の監視カメラには上向きのものまである。危険な落下物を取り締まるためのもの。
 中国の「モーレツ人間」をあらわすコトバとして、「九九六」というものがある。毎日、午前9時から夜9時まで、週6日間、働き通すこと。でも、実のところ、夜10時まで働くのが常態で、このあと帰宅しようとすると、タクシーをつかまえるのが難しい時間帯になっている。ホワイトカラーの8割で、残業が日常化している。
 上海にいると、日本は資本主義の顔をした社会主義で、中国は社会主義の顔をした資本主義だと思える。日本が社会主義だなんて笑ってしまいますが、中国は明らかに資本主義そのものだと私も思います。
 中国人、それも上海人は九州に来て「癒やし」を求める。なるほど、それは言えるかも...、と思います。阿蘇の大観峯は気宇壮大な気分に浸れますし、湯布院や黒川の温泉街って、気分をすっかり落ち着かせるから、日本人でも「最高!」って思いますよね。
 上海そして中国の現実を手軽に知れる新書です。
(2022年2月刊。920円+税)

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