弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2023年4月12日

先制攻撃できる自衛隊

社会


(霧山昴)
著者 半田 滋 、 出版 あけび書房

 3月初め、福岡で講演会があったとき、著者のサインをもらいました。著者の話は、いつも明快なうえに、豊富な映像をともなっていますから、視覚的にもよく分かります。いえ、よく分かって楽しいのではありません。すごく腹が立つのです。方言で言うと、「腹かいた気分」になります。もちろん、著者に対して腹を立てているのではありません。話を聞いて、自民・公明政権のやっている軍事予算「爆買い」路線に対して、です。
たとえば、日本はF35Bを42機もアメリカから買うことになっています。ところが、このF35というのは、とんだ欠陥機であり、「未完成の機体」なのです。開発以来、20年もたっているのに、完成していないというのですから、ひどいものです。そして、アメリカでも日本でも重大(死亡)事故を何回も引き起こしています。そんな欠陥機を日本はアメリカのトランプ大統領の口車に乗せられ、アメリカ軍事産業を助ける目的で「爆買い」した(している)のです。もう、やめて...。
北朝鮮がロケットを打ち上げたといっても、日本政府とマスコミは「ミサイルが打ち上げられた」としか報道しない。
 でも、ロケットとミサイルは、まったく同じ技術。日本政府とマスコミはそれが分かったうえで、国民に対してロケット打ち上げとは言わずにミサイルと呼んで、その怖さをことさら言い立てて恐怖心をあおり、利用しようとしているのです。
 今や日本の防衛予算は5兆円を軽く突破。なにしろ5年間で43兆円も支出するというのです。アメリカの軍事産業は、それによって大いに懐を肥やします。日本はアメリカの「死の商人」を肥え太らせるばかりです。
そして、日本に駐留するアメリカ兵士の生活まで面倒見てやっています。アメリカ人技術者40人が、青森県の三沢基地に滞在することになるので、国はアメリカに代わって30億円もの生活費を負担するというのです。アメリカ人兵士Ⅰ人あたりでは年間7500万円もの巨額を日本政府は負担します。「なぜ、アメリカ人技術者の生活費まで負担するのか?」と問いかけると、「彼らはアメリカ本土での生活を捨てて、日本のために働くのだから」という回答。
 ええっ、嘘では。こんなこと、アメリカ人以外にはしていませんよ。
 日本を守ると言いながら、中味としては、軍事予算を増やしてアメリカと日本の軍事産業を喜ばせています。
 安保法制法が成立してから何年もたつのに、幸いというべきか、実施されたことはありません。
軍事予算の一部、ほんの一部でも教育予算にまわせば、大学の入学金や授業料をゼロにすることは簡単なんです。日本の「国」ではなく、「国民」を守る政治に切り替える必要がありますよね。

(2020年12月刊。1500円+税)

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